地方で必要なのはセレクトショップなどの「差別化」ではなく、地域の人に選ばれる存在であること

川上徹也・著 『物を売るバカ』刊行記念対談@盛岡「フキデチョウ文庫」
「フキデチョウ文庫」での対談模様

川上 そうですね。

沼田 そういった返事をすると、きょとんとされるわけです(笑)。それが一人ではない。本当に多くのコンサルの方がいらっしゃって。

栗澤 うちも「HPは作らないんですか」と言われることは多かったですね。まあ、今どきないというのも恥ずかしいかなとは思うんですが。

川上 ブログやHPというのは枝葉末節の話ですよね。発信をすることは、もちろんある場面においては大切なことですけど、それありきになっても意味はありません。

栗澤 「こうした方がいい」という意見は、さわや書店もかなりいただきますよ。我々の場合は親切心で言ってくださる方ばかりですが、セレクトショップにしてみてはどうか、と言われることは少なくありません。けれど、そう言いながら、一日に必要な売上げや見込み顧客数、商圏を考えているかと言うとそうではないわけです。書店は誰にとっても身近なものですから、何となく言いたいことがあるのでしょうね。他には、もうちょっとコミックを増やした方がいいんじゃないかとか、岩波書店を置かない本屋なんて本屋じゃない、とかですね。

一同 (笑)。

栗澤 そういうことを言うのは、「文学は崇高なもので、書店は文化を守っているところだ」と思っている方なんです。確かに文学はそういう側面もあるかもしれませんが、こちらは商売。八百屋さんや魚屋さんと売っているものが違うだけで、商売という点では何ら変わりはありません。置いてある本を買っていただいてお金に変えないと、私たちは生活ができない。

沼田 その通りですよね。

栗澤 けれど、商売ができてお金に換えられれば野菜でも魚でもいいのかというと、決してそんなことはないわけです。本が好きだからこの商売をやっている。あくまでバランスが大事で、我々もせめぎあいはあるんです。そこをまったく考えずに文化を守れ、地域の書店としてもっと考えろ、と言われても困ってしまいます。

川上 書店のセレクトショップってみんな簡単に口にしますけど、うまくいっているところってなかなかないんですよね。

栗澤 マーケティングをちゃんとやって、狙いを定めてやる分にはかまわないと思います 。しかし、売上げが厳しいから棚を変えよう、店のコンセプトを変えよう、おしゃれなセレクトショップにすれば人も集まるだろう、というよう考えなんて、実際の店舗経営では通用しませんよね。

その本は「売れた」のか?「売った」のか?

沼田 私の周りの人たちは、「欲しい本を求めてさわや書店さんに行っても、まず置いていない」って言うんですよ。

川上 へえ。

沼田 でも、帰るときには買うつもりのなかった本を持っているって。

川上 あはは、確かに。僕もさわや書店さんに寄るときは出張中が多いので、なるべく荷物を増やしたくないと思っているのに、ついつい買ってしまいますね。