『ソーシャルインパクト』【第4回】顧客満足(CS)志向からソーシャルインパクト(SI)志向へ

このソーシャルに対する意識の差が、企業の総合力を左右し、世の中にもたらすインパクトにも影響を及ぼすようになっています。つまり、人と人がつながる、あるいは共感の連鎖というソーシャルの戦略が重要なファクターになっているということです。多様な主体のあいだで、社会に好循環を与えるような「ソーシャルインパクト」をどのように共創するかという時代に変化しつつあるといってもいいでしょう。

そうした時代にあって、社会に好循環を与えるソーシャルインパクトをどのように生み出すかが重要になります。当然、マーケティングや会社組織、働き方などにもこの変化は影響を及ぼします。むしろ、これらを変えていくことがソーシャルインパクトを生み出すひとつの戦略になるのです。真に強い企業や個人、あるいはブランドをめざすうえで、いかにソーシャルインパクトを生み出すかが重要となる時代なのです。

結局、「社会のつながり」をつくることで共有の価値を創造する。それが、よりインパクトを強めることにもなります。共有の価値の創造は、前にも述べたCSV(Creating Shared Value)そのものです。

生産性を上げるソーシャル・キャピタルのチカラ

CSVは「共有価値の創造」であり、つながりという意味での「ソーシャル」の共有価値を共創するビジネスモデルをつくり上げていくものです。社会とのつながりを重視しているからこそ、多くの共感を生みやすく、共有の価値が創造されることになります。

CSVを追求するには、共有価値の創造の仕組みづくりが不可欠ですが、その生産性をより高めるために見逃せないのが「ソーシャル・キャピタル」のチカラです。

ソーシャル・キャピタルとは、一般に「社会関係資本」と訳され、社会・地域における人びとの信頼関係や結びつきを表します。経済や教育、健康、幸福感などによい影響があり、社会の効率性が高まるとされるこのソーシャル・キャピタルの蓄積こそ、お互いの信頼や協力を生み出すためのカギを握ります。

CSVは、ただ単に取り組めばよいというものではありません。余計なコストはかけず、効率的に行うことでより高いパフォーマンスを上げることが求められます。そこで重要となるのが、このソーシャル・キャピタルという概念。人のつながりや絆が、その際の大きな資本になるという意味です。

CSVは、かかわっている主体同士が信頼し、協力し合い、補完し合うことによって共有の価値を生み出し実現します。それには、何より人のつながりが欠かせません。「お互いさま」という自発的な協力関係がベースにあれば、不確実な事柄に対するリスクを引き下げることもできます。結果的に、ムダを省き、生産性も上がるので、より高いパフォーマンスを上げることができるのです。

ただ、このソーシャル・キャピタルは、キャピタルといいつつも、貯金のように貯めておける資本ではありません。日常的な協働活動など、一種のフローが回っているからこそ、お互いに状況がわかり、打ち解けることができ、その結果として、維持できる資本がソーシャル・キャピタルです。そうした点にも留意しておくことが重要です。

自分ごと・みんなごと・世の中ごとの連鎖関係

ソーシャルインパクト戦略とは、つながりのネットワークを活性化させる戦略ですが、世の中の多様な関係者のつながりが活性化すると同時に、それぞれが「他人ごと」ではなく、「自分ごと」となり、さらに「みんなごと」「世の中ごと」として機能するようになる、企業やビジネス、働き方の戦略といえます。

そこでは、それぞれの関係者が「自分ごと」としてとらえ、一緒になって歩んでいくのが理想の姿ですが、そう容易なことではありません。それぞれが「自分ごと」と思い、それが「みんなごと」「世の中ごと」となり、価値を共創していくようになるには、そのための関係づくりのデザインと工夫、持続的な試行錯誤が必要です。

「自分ごと」「みんなごと」「世の中ごと」の連鎖関係をいかになり立たせるか? それがソーシャルインパクトを生み出し、機能させる大切な要素です。