「困りごと」はビジネスチャンス──ヤマトグループがビジネスで取り組む地域活性化支援

玉村雅敏・横田浩一・上木原弘修・池本修悟著『ソーシャルインパクト』【第2回】

そこで、ヤマトグループ各社がもつLT(物流)・IT(情報)・FT(決済)の機能を「プラットフォーム」として地域に開放し、協業というかたちで新しいインフラを行政と一緒につくっていけないだろうか。そういった考えからはじまったのが「プロジェクトG」です。

ねらいは地域活性化で、プラットフォームは行政、地域住民、生産者、NPOをはじめ、地域に根ざした同業他社も自由に使えるようにしています。自治体との連携案件は、見守り・安否確認・買い物支援、復興・災害支援、地域農産物の販促支援などに及び、2014年3月現在ですでに550件を超え、さらに増えつづけています。

そうした「プロジェクトG」のなかで、注目したい取り組みが高知県大豊町の事例です。

四国山地の中央部に位置し、豊かな自然に恵まれた大豊町ですが、過疎化・高齢化の波が押し寄せ、現在では、四国で唯一、65歳以上の高齢者が50%以上を占める自治体となっています。

それにともない日常の買い物にも不自由する高齢者などの「買い物困難者」が急増。商店のない集落ではタクシーで片道3000円以上かけて出かけ、まとめ買いする住民も少なくありませんでした。山間部の集落のため、タクシーで横付けできない場所もあり、重いお米などをもって自宅まで運ぶのは、高齢者にとっては大変な重労働でした。そうした状況のなかで、ヤマト運輸に声がかかりました。

地元のスーパーから、「高齢のお客さまが買い物された商品を自宅に届けるサービスはできないだろうか」と相談を受けたのです。ヤマト運輸はさっそく検討しましたが、毎回の配送料が必要になるため、利用者のみが負担するモデルでのビジネス展開はむずかしい状況にありました。

そこで、商工会が買い物サービス検討会を立ち上げ、買い物支援の新しいモデルづくりに着手したのです。そうして考え出したのが、利用者・商店・行政がそれぞれのメリットに応じて費用を分担するというモデルです(詳細は第2章参照)。大手スーパーが取り組んでいる宅配サービスのネットスーパーは、大豊町では商品が翌日に届けられるものであり、またインターネットでの展開を中心とするため、高齢者には必ずしも使い勝手がいいとはいえません。

大豊町にとって、地元の商店を支援することにもなる使い勝手がいいモデルとは何か。それが、地元の商店が集落の高齢者から電話注文で必要な商品を聞きとり、その商品のピックアップと配送をヤマト運輸に依頼するという仕組みでした。今では、地元商店が積極的に活用し、高齢住民にとっても大変利用しやすいサービスとなっています。

そもそも山間部に住む高齢の大豊町の住民が、地元の商店に買い物に行くというのは、とてもつらい行為になっていたのです。地元商店の方も高齢になっていると、自ら配送することには限界があります。いずれ大豊町に高齢者はだれも暮らしつづけることができなくなってしまう。そういった危機感が大豊町にはありました。それを物流という社会インフラを担っている企業に協力を求めることで、高齢者が暮らしやすい環境に変化させることができたのです。人びとの生活が成り立たないと、物流の必要性がなくなり、地域での事業が成り立たなくなります。ヤマト運輸にとっても、地域で事業として継続していくことができるビジネスモデルを生み出したといえます。

行政としてのメリットもあります。単に「県と町は補助金を出しています」ということではなく、行政サービスをヤマト運輸に担ってもらっているというのが、このモデルの見逃せない側面です。つまり、商品を自宅へ配達するという買い物支援に加えて、お年寄りの見守り支援というサービスも担ってもらっているのです。

大豊町は、先にも触れたように町民の50%が65歳以上の高齢者という自治体であるため、高齢者の体調管理や健康状態の把握が欠かせません。しかし、山間部にあることや民生委員自身の高齢化などから、柔軟な活動には限界もあります。

そこでヤマト運輸は、商品を自宅へ配達する際に、セールスドライバーがヒアリングシートを活用して高齢者の体調を把握するという見守り支援も手がけることにしたのです。高齢者の見守り支援として、何か変調があった場合に自宅に設置した専用ボタンを押して役所などへ連絡するというサービスを手がけている自治体はあります。しかし、それにも限界があり、あの手この手のサービスを組み合わせる必要があります。