櫻井秀勲 第2回 「『金額はお好きなように』と差し出された小切手事件」

島地 勝彦 プロフィール

櫻井 肝が据わっているなあと思う人は、なぜかだいたい背が低いんです。相賀さんもそうでしたが、古岡さんも背が低い。

わたしは55歳で物書きになろうと決心しまして、祥伝社を辞めてウーマンウェーブという会社を作ったんですね。あれは立ち上げたばかりのころですが、朝、事務所に行ってみるとドアに学研の社員の名刺が挟んであった。わたしはてっきり事務用品か何かを売りにきたのかと思っていました。ところが、あとで分かったのですが、その社員は古岡さんの懐刀だったんです。

で、その人が「古岡オーナーが櫻井さんにお目にかかりたいといっている」という。それで古岡さんと料亭ではじめてお会いすることになりました。そしたら古岡さんはおもむろに小切手を取り出して、「どうぞ」と差し出すんです。もうハンコが押されていました。「金額は好きなように書いてください」と。

シマジ 自分が見込んだ才能に対するお金の使い方という点では本郷さんに似ていますね。それで櫻井さんはどうなさったんですか?

櫻井 わたしは驚いて、頂くべきかどうか、金額を書くなら幾らにすべきか、迷いに迷いました。よく見たら、その小切手は学研のものではなく古岡さん個人のものでした。でも小心者のわたしは結局、なにも書けなかったんです。

セオ シマジさんなら迷わず20億円くらい書きそうですよね。

立木 いやいや、シマジは豪放磊落なふりをしているだけで案外小心者だから、やっぱり書けないんじゃないか。

シマジ もの凄い体験ですね。たぶんわたしも書けないと思う。なにかこちらの腹の内を見透かされているようで恐ろしい話ですね。

〈次回につづく〉

 

櫻井秀勲 (さくらい・ひでのり) 1931年、東京都生まれ。東京外国語大学ロシア語学科卒業。文芸誌の編集者から、31歳で「女性自身」の編集長に抜擢され、同誌を100万部雑誌に育て上げた。以後「微笑」「新鮮」「ラセーヌ」を創刊し女性誌の一時代を築いたのちに独立。女性心理・女性の生き方(恋愛・セックス・結婚・ビジネス)研究の第一人者となる。光文社取締役編集室長、祥伝社取締役編集部長、秀友社代表取締役、学習研究社編集顧問、共立女子短期大学講師などを経て、現在はウーマンウェーブ代表取締役会長。『女がわからないでメシが食えるか』『運命は35歳で決まる』『戦後名編集者列伝』など、著作は170冊を越える。公式ホームページはこちら
島地勝彦 (しまじ・かつひこ) 1941年東京都生まれ。青山学院大学卒業後、集英社に入社。『週刊プレイボーイ』『PLAYBOY』『Bart』の編集長を歴任。現在は、コラムニストとして活躍中。主な著書に『乗り移り人生相談』『知る悲しみ やっぱり男は死ぬまでロマンティックな愚か者』(ともに講談社刊)など。Webで『乗り移り人生相談』『Treatment & Grooming At Shimaji Salon』を連載中。最新刊『男と女は誤解して愛し合い 理解して別れる---乗り移り人生相談傑作選(1)』(日経BP社)が好評発売中!

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