いま話題の”新しい魔女”のルーツを探る『魔女の世界史』

さて、ここまで『魔女の世界史』第2章の20世紀カウンターカルチャーのなかでの新魔女運動の展開を概説してみました。本書ではこの他に、パンク以降に展開する「ゴス」、そのルーツとなる19世紀の「ゴシック・リヴァイヴァル」が紹介されています。ゴスロリやアニメについても触れられているほか、著者が魔女的だとみなした「サロメ」や「イシス」といったモチーフや人物の紹介、「新魔女」を理解するための100のキーワード集など、きわめて多角的に様々な事例が取り上げられています。神秘とは何なのか、女性とは何なのか、それを考えるにあたって楽しく視野を広げ、深めてくれる1冊だと思います。

あなたの会社の同僚のクラスメイトや学校、あるいは親戚のなかに、魔女っぽい人はいませんか。本書を読むことで、彼女らについての理解が深まるかもしれません。あるいは、あなたの好きな物語に魔女っぽいキャラクターは出てきませんか。本書はきっとそれらのキャラクターの理解を深める手助けになります。そしてそのことは、日々、魔女的な人やものが増え続けている現在、あなた自身についての理解を深めることにも繋がると言えるでしょう。

本書の編集協力に名前を連ねている、現代の魔女こと谷崎瑠美氏とバンギ・アブドゥル氏は、先日ドミューンに出演して、のべ9000人もの視聴者を集めました。ハリーポッターの大流行ののち、世界では再び魔女がブームとなっていると言えるでしょう。また、本書で著者が主張しているとおり、「ゴス」と呼ばれる文化が現代的な魔女の現れなのだとしたら、ゴスロリに限らず様々な姿で世の中に魔女が登場していることは、さらに確かなことになります。

※本書に編集協力で関わっている、谷崎瑠美氏、バンギ・アブドゥル氏が登場する、これまた今話題のWebメディア「VICE」の動画コンテンツ。凄いタイトルですが、内容は案外穏当です。

また、最近別の機会にインダストリアルミュージックのディスクガイド『INDUSTRIAL MUSIC FOR INDUSTRIAL PEOPLE』を書かれた持田保氏にお会いした際に、日本の魔女とも言うべき恐山のイタコ(巫女と言えば、より正確でしょうか)の声を録音したものを聞かせていただきました。 アイヌの伝承歌にも似ているなあと思ったのですが、むしろそのトランシーで独特のリズムは、21世紀になって流行してきている新しいクラブミュージック「JUKE」のビートにも似ていることに気づき驚きました。単なる類似に過ぎないかも知れませんが、この意外な類似から、また異なった方向からこれらの文化について解釈を加えることもできるかも知れません。

魔女の世界史 女神信仰からアニメまで
作者:海野 弘
出版社:朝日新聞出版

内容紹介
19世紀末、魔女は「見える」ようになった。神話、伝承から美術のアイコンへ。そして、今ここに乱舞する「魔女」たちの文化遺伝子。博覧強記の海野スコープが、20世紀~現代における最大の謎「魔女」を可視化する。

『ノンフィクションはこれを読め! 2013』HONZが選んだ110冊
作者:成毛 眞
出版社:中央公論新社

内容紹介
『「弱くても勝てます」開成高校野球部のセオリー』『ランドセル俳人の五・七・五』等、書評サイトHONZのお薦めレビューを集大成。