ロス疑惑、薬害エイズなどを担当した『無罪請負人』弘中惇一郎弁護士が語る「検察から無罪を勝ち取る方法」

弘中: 僕はそっちの方のことは詳しくないけれど、そうなんでしょうね。うちの事務所の仕事スタイルは、ある程度大きな刑事事件がくると、その都度、事務所を超えてリクルートするんです。どういうチーム編成でいくかと、サッカーの監督みたいでしょ。これがおもしろいんですよ。

山口: それはおもしろいですね! 刑事弁護は、人員も財力もシステムも揃っている検察が相手ですからね。大きな組織にネットワークで対抗するというのは正解なのかもしれない。

弘中: ネットワークは重要だと思いますよ。刑事弁護をやっている人が集まって情報公開をしたり、スキルアップの勉強会をするというような連携は今後もっと必要になってくると思います。

山口: 勉強といえば、今日は先生に勉強法のこともお聞きしたかったんです。昔の話になって恐縮ですが、先生は東大在学中に司法試験に通られていますよね。でも、それほどガリガリと勉強したわけではなかったと伺って。

弘中: そうですね。僕は大学の期末試験がクリアできれば通用すると思ったから、その勉強はしてましたけど。

山口: それだけですか!?

弘中: あとは、法学部の友人に勧められて、法律相談所というサークルに入って
、そこで一緒になった仲間と5人くらいでチームを組んで、順番に発表するような形の勉強ですね。だから授業とそういうサークルの範囲ですかね。

山口: なるほど。そのふたつが重なっているんですね。私は人と勉強するっていうより、基本書を何回も読むタイプなんです。

弘中: 基本書を一生懸命読むことは重要だと思いますよ。何回もって、どれくらい読むんですか?

山口: 「7回読み」というのが、私の勉強法です。簡単に言うと、サラッと3回、キーワードに注目して3回、仕上げに1回の計7回なんです。あ、先生の本はまだ3回しか読んでないですけど(笑)。

弘中: 私の本は7回も読まなくても大丈夫ですよ(笑)。私も当時のことを思い出すと、印をつけながら最初はゆっくり読んで、そのあともう一度読むと頭に入りやすい気はしましたね。

山口: それは先生がもともと知性と感性が鋭いからです。私が最初に読みながら印を付けると、だいたいポイントじゃないところに印を付けていることが多くて。最初からキーワードを見つけられるというのは能力あってのものだと思います。

弘中: そんなこと初めて言われたけどなあ。まあでも、弁護士という仕事は予定が立たないというか、不確定要素が非常に多いのでね、人から言われたからやるとか一生給料をもらうつもりではしょうがないと思うんですよ。若い人はそれこそ知性と感性を磨いて、どういう事件で自分は何をしたいか、何ができるかっていうことを積極的に考えて動いて行くべきですね。

山口: 先生が仰るように、人から頼まれた事件という気持ちではなく、“自分の事件”という気持ちで挑むのが大事なのですね。かなり前ですが、「30年後に弁護士としてどうありたいか」と問われて絶句してしまったことがあります。私は、最終ゴールを見るよりも、その時々に自分がベストだと思える判断を積み重ねていきたいなと思っていたからです。先生は目指す弁護士像みたいなものをお持ちですか?

弘中: ないですね。目指す生活や人生はあるけども、その一環として弁護士をたまたまやっているだけなので。

山口: そうなんですか! 先生は「弁護士とはこうあるべき」という揺るぎない理想をお持ちだと思っていました。なんというか、弁護士は弁護士らしくあることを何よりも優先しないといけない風潮がある気がしていて、それがけっこう重いなあと感じてもいたんです。

弘中: そういう思い込みにとらわれるのはやめて、「おもしろそう」とか「やってみたい」とか、そういう感覚を大切にした方がいいと思いますよ。

山口: 弘中先生がそう言ってくださると、とても心強いです! 自分が「おもしろい」と思える事件を選ぶから、“自分の事件”として思い入れが持てるんですね。すごくわかった気がします。今日は本当にいろいろ勉強させていただきました。ありがとうございました!

弘中: いえいえ。私も楽しかったですよ。お互い頑張っていきましょう。

<了>

(構成:熊坂麻美)

弘中 惇一郎(ひろなか・じゅんいちろう)
弁護士、法律事務所ヒロナカ代表。1945年、山口県生まれ。東京大学法学部在学中に司法試験に合格。70年に弁護士登録。クロロキン、クロマイ各薬害事件など多くの薬害事件で弁護士として医療被害と闘うほか、ロス疑惑をはじめ様々な著名事件で弁護を担当。2009年に起きた郵便不正事件では村木厚子さんの無罪を勝ち取った
山口 真由(やまぐち・まゆ)
弁護士。1983年、北海道生まれ。2002年、東京大学教養学部文科I類(法学部)に入学。在学中3年生時に司法試験合格。4年生時に国家公務員I種試験合格。2006年に東京大学法学部を首席で卒業後、財務省に入省し、主に国際課税を含む租税政策に従事する。2009年9月、弁護士登録。現在は企業法務と刑事事件を扱う弁護士として働きながら、テレビ出演などでも活躍。TOKYO MX「モーニングCROSS」コメンテーター。
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小沢一郎氏への国策捜査、薬害エイズ事件、三浦和義ロス疑惑…弁護人だけが知る事件の真実。
刑事裁判の有罪率99.9%が示す日本の恐ろしい現実とは?


多くの著名事件を手がけ「無罪請負人」の異名を取る辣腕弁護士が、日本の刑事司法の問題や特捜検察の腐敗ぶり、世論を真実から遠ざけるメディアの問題点などを提起する。

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