長谷川幸洋×宮家邦彦(キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)VOL.3―「中国の台頭」という大きな変化のなか日本はどう生き延びていくのか

『現代ビジネスブレイブ イノベーションマガジン』---長谷川幸洋「ニュースの思考法」より

「対中政策」には抑止と関与のバランスが不可欠

長谷川: 次に中国ですが、やっぱり中国とどうやって向き合ったらいいのか、そこは凄く難しいと思うんですが・・・・・・。

宮家: いや、そんなに難しくないと思いますよ。私は1990年代からの基本的な対中政策を変えるべきではないと思いますし、実際変わってはいない、日本もアメリカも。それは中国を経済で変えていくということなんですが、今のところ失敗していますけどね。

中国をエンゲージする、中国を関与させる、今もこれがまず第一ですよ。だけど中国が関与しない場合、したけれども上手くいかない場合には、当然抑止をしなければならない。今までは抑止の部分が足りなかったわけだから、逆に言うと関与があまり上手くいっていない現状があったわけだから、日本も遂に抑止のことを考えざるを得なくなってきたということは言えると思います。

しかし、じゃあ抑止が先にいって関与は後なのかといったらそうではなくて、やはり関与を先に出して、TPPをやってルールを作って、「中国さん、入ってらっしゃいよ」というふうにやっていかなければならない。かなり厳しい関与ですけどね、そういう形で対話をしながら、しかし一方では抑止もしなければならない。

抑止をするということは戦うということではない。中国との関係は我慢比べということなんですね。領土問題が絡んでしまっていますから、当分は南シナ海でも東シナ海でも我慢比べなんです。彼らは10年でも20年でもかけて獲りにきますからね。

我慢しきれなかったほうが負けですから、その意味では適度に関与を続け、適度に抑止をして、そして不必要な衝突を避けるメカニズムを作り、知恵を蓄積をする。そのための対話をすることは何とかできるでしょうが、1970年代のような日中友好に戻ることは当分無理だと思います。

ですから、今後日本がやるべきことは、中国の台頭という大きな変化をまずいかに生き延びるかを考えるということです。そのために中国が国際社会の一員になるのであれば、喜んで諸手を挙げて歓迎をするけれども、もしも中国が現状にチャレンジするのであれば抑止をしなければならない。それでも、日本は別に彼らと戦争をしたいわけではなくて、現状を維持をしたいだけですから、他の現状維持勢力との連携を引き続き維持していくということです。

長谷川: その抑止と関与の枠組みやメカニズムという問題ですが、TPPはどちらかというと関与のほうが大きく出たものです。経済的に通商交渉の枠組みなので関与のほうが大きく出たけれども、その裏には抑止という思惑もちょっとはある、ということですね。

宮家: あれは関与の一バリエーションではありますね。WTOという経済コミュニティに入れたら中国も少しは良くなるかと思ったら、そうはならなかった。中国は国際経済の美味しいところだけとって自分たちの経済システムを変えなかったわけですよ。

ですから、TPPが求めているのは、実はもしも中国がこれ以上繁栄したいんだったら、中国国内の経済システム自体を変えなければダメですよ、ということです。そのために国営企業についてベトナムと交渉したわけですよね。そういう一種の関与のなかでも今までできなかったことを国際的な約束事のなかにすり込んでいって、中国に対して新たな関与を求めていくべきだと思うんですね。TPPに軍事的な意味での抑止という意味はないと思いますから、あくまでも経済の世界での、より強いメッセージだと思います。

長谷川: 中国はその関与の誘いに乗ってくるんでしょうか。

宮家: 乗ってこないでしょうね。というのは、WTOは上手く乗り切ったけれども、あれも途上国条項を使ったり紛争メカニズムを徹底的に利用したりして今まで生き延びているわけですが、TPPの場合は本当に国内のシステムの変更を求められる可能性がありますから、それはできないでしょうね。

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