経験が創造力をたかめる

『現代ビジネスブレイブ リーダーシップマガジン』---リチャード・ブランソン「世界を変える経営」より

ほとんどの大手企業に、勤続年数がとても長く、担当の仕事にも長けているため、誰もが「その人がいなければ業務は成り立たない」と考える人物がいます。顧客をすべて把握していたり、専門性に長けていたり、誰もが悩む問題に直面したときに、過去に一度だけ行った方法で解決してしまうといった能力のある社員です。彼らのなかには、今の地位に満足しており昇進を望まない人もいるでしょう。しかし多くは花形で、会社についての深い知識は貴重であり、ほかに置き換えることはできません。

多くの企業の新しく刺激的なアイデアは、そういった過去の豊富な経験から生み出されるものです。熟練者は時に、新たなものよりも、過去の事例を参考にしてはどうかと言うかもしれません。そしてこの意見がかなり役に立つ場合があります。実際、新たなアイデアは、昔の考えを焼き直しただけ、ということが多いのです。

豊かな経験と深い知識から生まれる心地よさ

1970年代、ヴァージンが最初のレコードショップを起ち上げた時には、行きつけの場所という雰囲気づくりを試みました。顧客の大半が10代なので、コーヒーやクッション、ビーンバックを無料で支給し、音楽の話が落ち着いてできればレコードの購入にもつながるだろうと考えたからです。

これは当時は画期的なアイデアでしたが、大手の競合他社はビジネスを理解していない、、クレイジーな子どものお遊びだ、と言って相手にはしませんでした。しかし結局は、そのクレイジーな子どもの心を理解できるクレイジーな子どもが必要だったのです。なぜって、その数十年後、ヴァージン・メガストアは世界で有数の音楽ショップになるまでに成長したのですから。

この考え方は、ヴァージン・アトランティック航空を起ち上げた1980年代でも重要な要素となりました。事実、ビジネスクラス用の空港ラウンジの設計の際は、もう一歩進んで、無料のフードとドリンクを用意し、理髪やホットタブ、マッサージといったサービスで差別化を図りました。基本的な考え方はここでも同じでした。

競合他社は「ムダな経費」はヴァージンの死を早めるだけだ、と決め込んでいましたが、30年後のいまなお、このラウンジサービスは数々の賞を獲得し、他社はこれに追いつこうと躍起になっています。

2012年にイギリス政府から住宅ローン金融会社のノーザン・ロックを買収したころになると、すでにこの考え方が私たちのDNAに刻み込まれていると言っていいほど定着していました。古くさい個人向けの銀行業務の体裁を顧客のために変えようと決意し、銀行のウェブサイトやアプリケーションにかなり手を入れました。ヴァージンマネー・ラウンジは顧客の想像力をもっとも刺激したイノベーションであり、これもまた、豊かな経験をもった社員の深い知識から誕生したものでした。・・・・・・この続きは『現代ビジネスブレイブ リーダーシップマガジン』vol087(2014年8月5日配信)に収録しています。

リチャード・ブランソン/Sir Richard Charles Nicholas Branson---ヴァージングループ創設者 / 1950年イギリス生まれ。70年にレコード通信販売会社「ヴァージン」、84年「ヴァージン アトランティック航空」を設立。00年英国エリザベス女王から「ナイト」の称号を授与。熱気球での世界初の大西洋・太平洋横断、世界一周気球旅行など冒険家としても知られる。
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