ときど『東大卒プロゲーマー』【第4回】僕の人生を切り拓いたのは、冷静さでも合理性でもなく、身を焦がすような情熱と闘争心だった

「東大まで出て、なんでプロゲーマー?」

プロゲーマー「ときど」は、格ゲー通の間でどんなふうに評価されているか。

「格ゲー界のスーパーコンピューターと言われる現役東大生の格ゲー神。対戦には読みも情も必要ない。必要なのは理論である、と言わんばかりに、その恐るべき頭脳から繰り出される徹底的に合理性を追求したプレイスタイルはさすがに東大生といえよう」(格ゲープレイヤーwikiより)

大学生時代に書かれたもののようだが、なるほど、そうかもしれない。
僕は勝利至上主義であり、勝ちに徹するがゆえ、観客にとっては退屈にも映りうる試合展開も辞さない(正確にいうと、辞さなかった)。その空気を読まない「寒い」プレイスタイルから、「アイス・エイジ」というあだ名も拝命した。

ついでだが、プレイ中の表情がまるで殺人鬼のようだと、「tokido with the murder face」とコメントされたこともある。マーダーフェイスも、僕の拝命したあだ名だ。ちなみに、殺人鬼のような顔は集中すると自然と出てしまうというだけで、わざとではない。

キャラ選択においては、躊躇なく「最強」と目されているキャラを選ぶ。使っていて面白いキャラを選ぶ人もいるし、ときどは最強キャラばかりでつまらないといわれることもあるけれど、僕は一番強いキャラを使って、最短距離で勝てるであろうはずの戦略を相手にぶつけ、勝てば官軍、それが一番いいプレイだと考える。ひたすら勝ちに徹したい。

勝てればなんでもいい、プレイはとことん合理的――これが「ときど」のイメージなのだと思う。本人である僕から見ても、まったく的外れではない。

……でもね、というところから、この物語は始まる。それこそ、冷静になって、常識にもとづいてよく考えてみてほしい。

東大を卒業して、
大学院に進学し、
院を中途退学、
就職の道を蹴って、プロゲーマーに。

変だと思うだろう。誰だって思うはずだ。「どこが合理的なんだ」と。その推察は正しくて、冷静沈着で合理主義者というのは、ときどというプレイヤーの一側面でしかない。

「東大出身なのに、なぜプロゲーマーに?」

何度となく、そう尋ねられた。僕はこれまで、この問いに答えようとしてこなかった。否、正直にいえば、答えられなかった、というほうが正しいかもしれない。

プロとなりゲームに打ち込んで、大会での優勝に燃えていた僕は、その疑問への長い答えを、うまく説明することができないでいた。

しかし、数々の対戦を通じ、挫折と呼べるような手痛い敗北も経験するなかで、自分を顧みざるをえないときがやってきた。そして僕は、自分について考えた。

本書にその経緯を記し、質問に対する答えにかえたいと思う。

先に少しだけ書いてしまうと、プロゲーマーとしての僕の人生を切り拓いたのは、冷静さでも合理性でもない、身を焦がすような情熱だった。尽きることのない闘争心だった。

情熱や闘争心は、以前の僕にとっては自分自身でも意識することができない、心のなかの霞のようなものだった。それが、さまざまな経験をし、その経験を味わうことで、徐々に形を現してきたのだ。

僕は恵まれた家庭に育ち、いとも自然に東大を目指し、安定志向で、公務員試験の最終面接まで進んだ男だ。大冒険などするはずもないような人生だった。

でも、それらを全部捨てて、プロゲーマーになった。

本書に続く

ときど
1985年沖縄県那覇市生まれ。プロゲーマー。本名・谷口一(たにぐち・はじめ)。麻布中学校・高等学校卒業後、東京大学教養学部理科Ⅰ類入学。東京大学工学部マテリアル工学科に進学、卒業。同大学院工学系研究科マテリアル工学専攻中退。2010年、日本で二人目となる格闘ゲームのプロデビュー。理論に裏付けされたセットプレイの構築を得意とし、複数のゲームタイトルで活躍する。年間に出場する国際大会は10を超え、海外大会での優勝回数は常にトップクラスを誇る。大会実績として、World Game Cup 2013優勝、EVO2013準優勝、Id Global Tournament 2014優勝など。TOPANGA所属。
 

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