※『東大卒プロゲーマーー理論は結局、情熱にかなわない』(PHP新書)より抜粋
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美しく、そして破壊力抜群の連続技は、いつの時代も格ゲーファンを興奮に駆り立ててやまない。決まれば格好いいし、拍手も起きやすい。だがしかし、プレイヤー目線でいえば、それだけでは全然勝てない。格ゲーには常に相手がいる。自分が途方もない時間をかけて技を磨き上げようと、相手の力量如何ではまったく通用しないことがあるのだ。
そこで必要なのが、対戦相手の過去の試合を研究し、その相手にふさわしい戦略を立てること。僕が何より重視している、「対策」である。
戦略とは、ある目的を達成するために練るものだ。格ゲーにおける目的とは、「自分の体力を使い切る前に、相手の体力をなくす」ことである。これだけ見ればシンプルだが、目的を遂行するプロセスにおいてキャラをどう操るか、相手のキャラはどう対応するのか、そこには無数のバリエーションがある。
対戦相手(人間)と、相手が使うキャラクター、そしてその場の状況。すべてを組み合わせて想定される事態に対し、準備しておくこと。これが対策だ。
既に格ゲーファンである皆さんにも、これから一回見てみようかなと思っている皆さんにも、ぜひ知っていただきたいことがある。連続技をきれいに出すのは初歩の初歩。その裏で行われている熾烈な「知恵比べ」まで読みとってもらえたら、格ゲー観戦は飛躍的に面白くなると思う。
そんなわけで、大会の日が迫ってくると、僕は特別な練習メニューを用意する。すでに対戦が決まっているプレイヤー、あるいはトーナメントに勝ち上がってくる可能性の高いプレイヤーと闘うときのための対策を練るのだ。具体的には、まず彼らの対戦映像をチェックする。最近では動画投稿サイトに映像がアーカイブされるようになり、この作業が手軽にできるようになった。理想をいえば、自分との対戦動画があれば望ましい。