ときど『東大卒プロゲーマー』【第2回】世界にファんとライバルが存在する「格闘ゲーム」の魅力

こうしたジャンルに比べれば、格ゲーシーンの規模はまだまだ小さく、「プロゲーマー」の認知も進んでいない。それは事実である。でも、韓国の例を見ると、前述の「いつまでもタイガーに追いつかないとは限らない」という僕の野望的観測が、あながち見当はずれでもないことを感じてもらえるのではないだろうか。

では、なぜ格ゲー業界が出遅れているのか。その理由のひとつは、格闘ゲームが日本発のジャンルであるため、海外での認知が他のジャンルに比べて立ち後れた、ということだ。

ゲームとしての魅力についていえば、格ゲーは劣るどころか、僕からしたら断然上といいたいところだ。

格闘ゲームの魅力を考えるとき、韓国で絶大な人気を誇る前述の「リーグ・オブ・レジェンド」と比較しながら見ていくと、わかりやすくなる。

まず、格闘ゲームの魅力のひとつは、個人戦であるところだ。「リーグ・オブ・レジェンド」はチーム対戦型であり、それゆえの敷居の低さが魅力になっている。だが、格闘ゲームは1対1のガチンコ勝負。誰でも参加できるフェアな世界ではあるが、反面、強いものが勝ち、弱いものが負けるという、勝負の残酷さが露わになる世界でもある。それだけに、1戦1戦の勝負の重みが増す。

次に、プレイヤーの活躍期間が長いこともまた、格闘ゲームの魅力である。要は、選手寿命が長いのだ。

「リーグ・オブ・レジェンド」は、それが観客側からすると面白いところでもあるとおり、プレイヤーの入れ替わりが激しい。その理由は、若く身体能力の高いプレイヤーが比較的有利だからだ。戦略の戦いも行われるものの、実際のプレイではいかに正確に、素早く判断を下して動けるかの比重が大きくなる。30歳にもなれば超ベテランの世界だ。

一方、格闘ゲームの場合は、様々な武器を持ち込むことができる。操作技術が得意なプレイヤーもいれば、戦法の構築や読み合いが得意なプレイヤーもいる。反射神経だってもちろん武器になる。それぞれが自分の得意分野を頼みにして勝負するのである。

少し丁寧に私感を書くと、「操作技術」の得意なプレイヤーは、世間でいうところの「ゲーマー」の方に多い。どんなゲームをやらせてもそつなくこなすタイプだ。格闘ゲーム以外のジャンルでも全国クラス、なんて人がいたりもする。彼らは普通の人が苦労して会得する華麗な連続技や、難度の高い入力をいとも簡単にやってのけたりする。とにかく「ゲーム」が上手い。プロの僕から見ても唸ってしまうほどだ。

「反射神経」についていえば、これはもう若い人が圧倒的に強いだろう。特に優れた反射神経の持ち主であれば、それを駆使することで、他の誰にも真似できないプレイが可能になったりする。これが非常に有利なのはわかっていただけることと思う。

さらに、「読み合いが強い」。これは読んで字の如しである。相手が何をしてくるかを判断し、その選択肢を潰していくのだ。いわゆる勝負事が強いタイプである。

最後に「戦法の構築」。これはゲームのシステムやキャラクターの個性を理解し、攻略を組み立て、それらを最大限に利用して勝ちにいくというスタイル。僕が他のプレイヤーよりも優れている部分があるとすればここだろう。

もちろんこれらの要素は互いに影響しあっているから、得意なパーツだけに頼って勝てるほど甘くはない。しかし逆にいえば、それらをどう組み合わせるかで、自分よりも優れた資質を持つプレイヤーを凌駕することもできるのだ。

僕がいいたいのは、やり方次第で年齢に縛られずに勝負でき、かつそれで結果を出せる、それが格闘ゲームなのである。そして、その活躍期間の長さが生み出したのが、その名を轟かす一握りのカリスマ・プレイヤーだ。

【第3回】に続く

ときど
1985年沖縄県那覇市生まれ。プロゲーマー。本名・谷口一(たにぐち・はじめ)。麻布中学校・高等学校卒業後、東京大学教養学部理科Ⅰ類入学。東京大学工学部マテリアル工学科に進学、卒業。同大学院工学系研究科マテリアル工学専攻中退。2010年、日本で二人目となる格闘ゲームのプロデビュー。理論に裏付けされたセットプレイの構築を得意とし、複数のゲームタイトルで活躍する。年間に出場する国際大会は10を超え、海外大会での優勝回数は常にトップクラスを誇る。大会実績として、World Game Cup 2013優勝、EVO2013準優勝、Id Global Tournament 2014優勝など。TOPANGA所属。
 

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