ときど『東大卒プロゲーマー』【第2回】世界にファんとライバルが存在する「格闘ゲーム」の魅力

世界中に存在する、ファンとライバル

大会の規模は、その国の格ゲーシーンの大きさをそのまま示す。

EVOの例からわかるように、プレイヤーの数と観客の数を根拠にするなら、世界最大の格ゲーシーンはアメリカであるといって間違いはないだろう。そしてほかの国々も、アメリカを猛然と追いかけている。

僕はこれまで、アメリカ、フランス、カナダ、ブラジル、ドイツ、スイス、スウェーデン、クウェート、シンガポール、オーストラリア、韓国、香港、台湾などの国々で闘ってきた。なかには、ゲームをしていなかったら一生行かなかったかもしれない国もある。そしてそのどこに行っても、格ゲーシーンの充実ぶりを体感できた。

世界の国々では、ときに日本以上のものを感じることもある。たとえば、観客たちの「積極的に楽しもうとする姿勢」では、アメリカの右に出る国はない。

日本で開催される格ゲー大会には、一定の「大人しさ」「行儀のよさ」が感じられる。極論すれば自分たちは「お客」であり、他の誰かが盛り上げてくれるだろう、というような、一歩引いた楽しみ方をしているように見える。

しかし、アメリカの観戦スタイルは、彼らのアメフトや野球などのスポーツ観戦を見てわかるとおり、とにかく積極的だ。消極的プレイがあれば罵声が飛ぶし、奇跡の逆転劇には拍手喝采。「自分たちで大会を盛り上げよう」という意識がとても強いように感じる。

シンプルな熱狂度でいったら、ブラジルに適う国はない。サンバの国というイメージ通りの賑やかさを、ゲームの大会でも感じることができる。娯楽全般をリスペクトする文化がブラジル人の血肉となっているのだと肌で感じられる雰囲気だ。ゲームの出張でも、お国柄を感じることは多々あるのだ。

世界中に存在している熱いファンを見るたびに、こんな人たちがいるなら、格ゲーシーンは今後もっともっと拡大していくだろうと確信させられる。海外プレイヤーの台頭も目覚ましい。格ゲーを開発するのは日本メーカー、強豪プレイヤーといえば日本人という定説も、いまや過去のものになろうとしている。すさまじい群雄割拠の時代が到来しているのだ。

なぜ格闘ゲームなのか

いま現在、格闘ゲームの「プロ」を名乗っているのは、世界でも20~30人だと思われる。日本人で、しかもゲーム1本で食べているという人間に限定すれば、さらに4人に絞り込まれるだろう。「思われる」「だろう」と曖昧な表現をしているのは、プロを認定する協会があるわけでもなし、そもそもプロの定義が明らかではないからだ。このへんも、まだ未整備なジャンルである証左といえよう。

本書ではひとまず、「企業のスポンサードを受け、ゲームをプレイすることで収入を得ている」人間をプロと呼ぶことにする。そして実は、格闘ゲーム以外のゲームジャンルを見渡せば、「プロゲーマー」という職業自体は、すでにメジャーなものになっている。お隣の韓国などは国をあげて、プロゲーマーを支援してもいる。

たとえば、「リーグ・オブ・レジェンド」というオンラインゲームがある。5対5などのチームで対戦するこのゲームのプレイヤー人口は、全世界でなんと7000万人を超えている。こうなると、動く金額もケタが違う。プロゲーマーによる公式リーグも設けられ、その1位の賞金は驚くなかれ、100万ドル(約1億円)にもなる。

さらに驚くべきは、プロゲーマーの社会的地位の高さ。彼らの名は国民の大半に周知され、結婚するとなればマスコミ各社が大きく取り上げる。ちなみに相手はモデルだったり女優だったり、なんとも華やかな世界なのだ。