セゾン投信代表・中野晴啓【第4回】「本物の投資」をしよう

『預金バカ 賢い人は銀行預金をやめている』第1章より一部抜粋

このように考えていくと、みなさんが持っているお金を振り向ける先はなにか、が絞り込まれていきます。

第一に、長期投資を前提にした投資信託。
第二に、付加価値の高いビジネスを展開している企業の株式です。

もちろん、ほかにも新しい金融の仕組みとして、日本国内に根付こうとしているものがあります。「マイクロファイナンス(小規模金融)」あるいは「クラウドファンディング(ネットを通じて多数の支援者から資金を集める方法)」などと呼ばれるものがそれです。あるいは伝統的な金融の世界でも、一部の地方銀行や信用金庫が取り組んでいるものの中には、本当の意味で地元経済を復活させるための起爆剤になるような試みもあります。

旧来の銀行がまともな金融ビジネスの一端を担えなくなっている以上、預金をするのではなく、こうした新しい金融の仕組みに資金を投じてみることはとても意味のあることです。そのお金は、決して無駄になることなく、世の中の発展のためにきちんと使われていくはずです。

そういう先に資金を投じることこそ、「本物の投資」なのです。

「投機」と「投資」は違う

さて、「本物の投資」をするならば、ひとつだけ絶対に理解して欲しいことがあります。それは、投資と投機のちがいです(決して投機が悪いことと言っているわけではありません)。

投機とは、簡単に言えば短期トレードのことです。FX(外国為替証拠金取引)などがまさにその典型ですが、為替だけでなく、株式投資でも短期のトレードは投機です。

投機は、得をする人、損をする人がいて、全体でプラスマイナスゼロになる「ゼロサムゲーム」の世界です。誰かの利益の裏には必ず誰かの損失があります。

株式投資にしてもFXにしても、目の前にいる誰かと闘うわけではないので、意外と意識しないままに過ごしている人が多いと思うのですが、たとえば、私が2,000円で買った株式を1,500円で手放したとすると、その裏には必ず2,000円で売り、かたや1,500円で買っている人によって利益を得た投機家がいるのです。トレードの期間が短くなればなるほど、この投機性は高まります。

「本物の投資」は、こうした価格の値動きで売り買いを繰り返し、価格のサヤを抜くというトレードとは違います。資金を投じた先の成長とともに、じっくりと果実を育てていくものです。

たとえば、iPhoneなどで有名なアップル社が、株式市場で新たな株式を発行する増資を行うとしましょう。目的は、新しい製品を開発するための開発費の調達です。投資家が、アップル社が増資で新たに発行した株式を買うと、そのお金はアップル社の製品開発資金になります。

アップル社は、その資金を使って新製品の開発を進めていくわけですが、製品開発には多大な時間が必要です。1週間や1ヵ月で成果が出るものではありません。だからこそ、長期投資による資金を必要とするのです。

そして、製品の開発に成功し、それが世界的な大ヒットになったら、アップル社の業績は大きく向上します。その利益の中から、株式を長期保有してくれた投資家に対して、お礼の気持ちが込められた配当金が支払われ、さらに株式価値の上昇というリターンをもたらします。本物の投資をする投資家は、こうして長期投資の果実をじっくり受け取っていくのです。