セゾン投信代表・中野晴啓【第4回】「本物の投資」をしよう

『預金バカ 賢い人は銀行預金をやめている』第1章より一部抜粋

たしかに、一人ひとりが貯蓄をしっかりするのは大切なことです。しかし、それを国民全員が過度に行うと、少なくとも現在の経済環境下では、悪い方向に進んでしまいます。前述したように、運用先をなくした銀行が、余った預金を国債への投資に回してしまうようなかたちで。そして、それが日本の財政赤字を助長する結果を招いています。

ならば、預金以外の運用方法はないのかというと、目一杯リスクテイクするような商品しか金融機関の窓口で購入することができない、という現実があります。このように、預貯金か、さもなければハイリスクの商品か、という二者択一しかなかったところに、個人の資産運用の根深い問題がありました。

しかし、預貯金かハイリスク商品かという二者択一とは別の次元に、「本物の投資」があります。それは、お金を投じれば投じるほど全員が幸せになれるような投資を指します。

資本主義社会においては、経済成長こそが正義です。経済成長があるからこそ、次の世代に豊かな世の中を残せるからです。

経済が成長するためには、それを後押しする"血液"が必要です。その血液とは、投資によって導かれたお金です。

「貯蓄から投資へ」という言葉があります。この言葉の意味するところは、経済活動を活性化することと、それに必要な「付加価値を生む事業」に投資するリスクマネーを作っていきましょう、ということです。ここで言う付加価値とは、私たち生活者一人ひとりの毎日を豊かにしてくれる事業、ビジネス、あるいは社会的な需要のある産業を指しています。そういうところにお金を回していくのが、「本物の投資」なのです。

たとえば企業は、新たな資本を調達するために「増資」を行います。目先の値上がり益にしか関心のない投資家は、増資を嫌がります。増資によって発行株式数が増えるため、一株あたりの価値が下がるケースがあるからです。

でも、増資が正当化される理由があります。それは、調達した資本を使って、いますぐには結果が出ないけれども、将来、大きな付加価値を生む可能性のあるものに投資できるからです。その結果、豊かさと幸せが実現したときには、増資による希薄化(一株あたりの価値が目減りすること)を我慢してくれた投資家のみなさんに、たくさんのリターンをお返しすることができます。その一点において、増資は正当化されます。

とはいえ、増資の中には非常に不純な理由で行われるものもあるので、注意が必要です。たとえばあるメガバンクは以前、総額で1兆円にも上る増資を行い、発行した株式を取引先の中小企業などに買わせました。

これなどは、銀行の優越的な地位の濫用の典型例です。このような増資には本来、応じるべきではないのですが、取引先企業は、このメガバンクからお金を借り入れているので、引き揚げられては困りますから応じるほかありません。このメガバンクは、取引先企業の弱い立場に付け込んで脅しをかけたのと同じなのです。