撮影:立木義浩
<店主前曰>
櫻井秀勲さんはかつて「女性自身」を100万部の大台に乗せた輝ける名編集長であった。一方のわたしも「週刊プレイボーイ」を100万部雑誌にした編集長であった。この100万部女性誌と100万部男性誌の元編集長同士による対談は、前代未聞の企画といえるだろう。
櫻井さんはわたしよりちょうど10歳年長で現在83歳だ。櫻井さんはわたしが現役のころから親しくさせていただき、編集の"秘技"をたくさん教えてくださった大先輩である。この度はじつに30年ぶりの再会だったのだが、相変わらずその眼光は鋭く、髪の毛もふさふさとしていた。
男同士は一度肝胆相照らす仲となると、たとえ何十年ぶりの再会であっても、その瞬間、昨夜別れたばかりの相手であるかのような親密感が湧いてくるものである。この対談がいつにもまして熱を帯びたのは言うまでもない。
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シマジ 櫻井さんとお目にかかるのは30年ぶりですかね。最後にお会いしたのは、わたしが週刊プレイボーイの編集長をやっていたころだと思います。
櫻井 そんなに時間が空きましたか。
シマジ ですが気の合った男同士というのは、こころのなかで相手のことを折りに触れ気にかけているものなのでしょう。不思議なくらい久しぶりと言う気がしません。
櫻井 そうですね。シマジさんとはさんざん飲み歩いた仲でしたからね。
シマジ わたしが若くていまよりもっと元気がよかったころ、あるところで知り合った女がいましてね。彼女のマンションに行ったら、なんとニシキヘビを飼っていた。わたしは巳年なのでヘビはそんなに怖いと思わないのですが、あのニシキヘビにはさすがに度肝を抜かれました。
するとその彼女が「櫻井さんもビックリしていたわよ」と笑いながら言うじゃないですか。おれもついに櫻井さんと"兄弟"になれるのかと光栄に思ったものです。