ダマされていた!! 身近な「基準値」はウソだらけ

血圧も、水道水の安全基準も、食品の賞味期限も
週刊現代 プロフィール

WHOのガイドラインにならった「10万人に1人ががんで死亡する」数値よりも低いことが、国際的に安全な目安とされており、無機態ヒ素について仮に計算すれば、ひじきの基準値は150μg/kgに相当する。しかし、ひじきに実際に含まれる無機態ヒ素は3万6000μg/kgと、なんと240倍。ケタ違いに多い。日本では、乾燥ひじきを水で戻したり、煮たりすることで、無機態ヒ素の大部分は溶け出してしまうので「安全」と説明されている。

この無機態ヒ素、多く含まれているのはひじきだけではない。日本人の主食である「コメ」も、この基準に照らすと、「危険な食品」になってしまう。

「欧米では、コメを多く食べること、とくに乳児の離乳食としておかゆを食べることのリスクが懸念されています。『10万人に1人』の基準で考えると、コメにはその100倍以上の無機態ヒ素が含まれることになる」(永井氏)

しかし、日本ではコメは規制の対象ではない。そこにはこんな事情がある。

「日本人にとってコメは主食で、特別な食品です。それを食べるな、という規制は現実的ではありません。確かに、コメを主食とし、海藻を多く食べるため、日本人の無機態ヒ素を原因とするがんのリスクは、数値上は高まる。『600人に1人』はがんで死亡する計算になります。ですが、日本は世界有数の長寿国です。日本食には、無機態ヒ素のリスクを上回る健康上の利益があると考えるほうが妥当なのです」(永井氏)

たしかに食生活はトータルで考えるべきもの。一つの食材の数値に振り回されると、現実を見失ってしまう。ここに「基準値の落とし穴」があるのだ。

マグロの基準値は特別扱い

「マグロ」もコメと同じく、日本で「特別扱い」されている。しかしこちらはコメと異なり、基準値について少し真剣に考える必要がありそうだ。

魚介類の水銀濃度を規制する日本国内の基準値は、'73年に初めて作られた。水俣病の調査結果から作られた厳しい基準値だったが、マグロ類や、サメなどが適用外になった。

「適用外になったのは、『高級魚のため摂取量が少ない』といった理由から。しかし、マグロが食卓に上ることが多い魚なのは明らかです。日本の食文化、さらには漁業関係者の生業を考えると、基準値通りに規制できないという現実が、科学的なリスクよりも優先したのでしょう」(永井氏)

しかも、その事実は長らく国民から隠され続けていた。ようやく'03年に厚労省が公開した魚介類の水銀濃度のデータでは、ミナミマグロの水銀濃度は、規制値が0・4mg/kgのところ、1・08mg/kgと、大幅にオーバーしている。これらの結果を受け、とくに水銀に注意が必要な妊婦の摂食量を検討し、同年、たとえばメカジキとキンメダイは週2回までにするなど、魚類の摂食制限が勧告された。