逆転キャリアのキーパーソンが仕掛ける、ソフトバンクの次なる一手「かざして募金」

安藤 光展

安藤:御社ではCSR活動にPR予算をつけにくい、ということですか?

池田:いや、予算ではなくてですね、サービスの構造上の課題です。「かざして募金」はあくまでもツールであり、「寄付したい!」という人を増やさないと何も始まりません。ツールの紹介をしても、そもそも寄付をするという"大義"がないわけです。どこどこのNPOに寄付したい、というような理由・目的があってこそのツールですから。

ですので、登録NPO団体に、この「かざして募金」をPRしてもらえるようなチラシを作っています。このあたりもKPIとして数字を追っています。団体側の方々が、ウェブやPRツールでどれだけ露出してくれているか、という点ですね。

ただ、NPOの多くはPRにそこまでリソースをさけない、という現状もあり、バナーを一つサイトに貼るだけでも数ヵ月かかることもあります。団体側の人たちがどうすればPRしやすいのかというのも、継続的に考えていきます。このあたりの、僕らだけではコントロールできにくいというポイントがある点は、今後の改善すべき大きなポイントです。

ですから、大きく3つですね。登録団体のPR状況、ユーザー認知、利用(ダウンロード数、寄付金額)、などの指標を毎日チェックしています。

チャリティホワイトと認知拡大

安藤:では、他のチャリティ・プログラムの目標や進捗のKPIはどうでしょうか?

池田:この「かざして募金」より前にスタートしているチャリティ・プログラムである「チャリティホワイト」という通信プランがあります。このプランはユーザーの方から毎月10円を寄付していただき、ソフトバンク側がも10円を加えて、1ユーザーで合計20円を寄付をする、というものです。今は約185万人の方にご利用いただいてます。

ソフトバンク・ユーザー3000万人の中で多いかどうかは別として、185万人もの方が、「寄付してもいいよ!」と言ってくれているということはすごいことだと思うんですよ。ここまでユーザーが増えたのは「かざして募金」とは違い、店舗でPRができたことでしょう。店舗で携帯電話をご購入いただく時に「こういう通信プランがありますけど、どうですか?」というような声がけができたことです。

一方、「かざして募金」は店舗では紹介しかできにくい。各店舗で特定NPO団体に寄付するよう呼びかけるのも、変ですからね。「かざして募金」を通じて寄付をする先は、ユーザーにゆだねられるべきです。この点が、ジレンマなんです。今後の大きな課題の一つと捉えています。

安藤:知名度をあげる、PRしていくって難しいですね。ちなみに、社内での認知度向上活動やPRはどうですか?

池田:社内単体で認知度調査をしたことは現状ないです。具体的な社内PRは、例えば、ビルのエレベータ内モニターで社員への告知はしています。ですので、「かざして募金」というサービスがある、というのは知ってもらえていると思います。ダウンロードしているかとか、寄付につながっているか、とかは微妙かもしれません。今後も継続的に、アピールはしていきます。

孫正義社長のCSR観

安藤:孫正義社長はCSRについてどのようなお考えなのですか?

池田:孫は、CSRについて理解しています。弊社の企業理念は「情報革命で人々を幸せにする」なんです。孫の中では、事業が持つ社会的要素を強く意識しているので、CSR活動単体でイケイケという感じではないと思います。もちろん、CSRの理解はしていますし、すべきだと考えています。CSRレポートの中の社長メッセージでも「情報革命で人々を幸せにする」についてふれています。

今年3月に行った「かざして募金」の記者発表(アンドロイド版のローンチ会見)の中で、孫は「こういった我々のCSR活動や、テクノロジーなどが社会に役に立つのであればぜひ進めていきたい」という趣旨のコメントをしましたが、あれが本心だと思います。

あと、孫は事業家ですので、コストだけをかけるCSR活動や社会貢献をグイグイやりたいとは思っていません。私もそう思っていますし、ソフトバンクとしては、今後もコストモデルだけのCSR活動を拡大させるということはないと思っていただければと。

課題は色々とありますが、僕らは「かざして募金」に大きな可能性を感じています。

【取材協力: CSRビズ

執筆:安藤光展(あんどう・みつのぶ)
CSRコンサルタント/ブロガー。専門はCSR(企業の社会的責任)におけるコミュニケーションの戦略立案。社会貢献系ウェブメディアの運営支援から、CSR研修講師、CSR関連の書籍・コラム執筆など。6年目に突入した個人ブログ「CSRのその先へ」を運営。著書『この数字で世界経済のことが10倍わかる–経済のモノサシと社会のモノサシ』(技術評論社)ほか。