2014.07.12

佐藤優のインテリジェンス・レポート---「集団的自衛権に関する閣議決定と公明党」~国連の集団安全保障措置による自衛隊の派遣が不可能になった~ほか

佐藤優直伝「インテリジェンスの教室」Vol040 インテリジェンス・レポートより
佐藤 優 プロフィール

分析メモ No.90 「ウクライナ政府による停戦停止」

ウクライナ東部の停戦停止を発表したポロシェンコ大統領---〔PHOTO〕gettyimages

【事実関係】
7月1日、ウクライナのポロシェンコ大統領は、ウクライナ東部で6月20日から続いていた停戦を停止すると発表した。

【コメント】
1.―(2)
ウクライナ東部では、6月20日から停戦が成立していた。

<停戦を機に、ロシアが軟化。ウクライナ国内への軍派遣を認めた事前承認を取り消し、欧州連合(EU)との間で緊張緩和の動きが始まっていたからだ。フランスやドイツの働きかけで、ポロシェンコ氏とプーチン・ロシア大統領は26日から、オランド仏大統領、メルケル独首相も加わった4者の電話会談を繰り返した。ただ、ロシアが親ロシア派への影響力を行使しようとしないなかで、ポロシェンコ氏は最終局面で停戦終了にかじを切った。

今後、緊張が高まることは避けられない。ウクライナ議会ではトゥルチノフ議長が「反テロ作戦が再開された」と宣言。議会では東部への戒厳令導入を求める声が高まっている。>(7月2日 朝日新聞朝刊)

1.―(3)
ウクライナ側は反政府系武装勢力(親露派)が攻撃を停止していないことを理由に挙げているが、この理由は説得力に欠ける。反政府系武装戦力は、現政権のウクライナ民族至上主義に反発し、自然発生的に形成された武装集団で、軍事的な規律が保たれていない。過剰に親露的姿勢を示しているにすぎず、ロシアの影響力行使に限界があることは、専門家の共通認識だ。

1.―(4)
アルカイダ系の「イラクとシリアのイスラーム国(ISIS)」が、イラクのマリキ政権に対する攻勢を強めている。イラク情勢の緊迫により、国際社会のウクライナに対する関心が低下している。ウクライナのポロシェンコ大統領は、「われわれのことも忘れないでくれ」と戦闘行為を開始し、「テロリスト」というレッテルを貼った自国民とロシア人の殺害を開始したと見るのが妥当であろう(戦闘の状況については、7月6日の朝日新聞デジタルの記事が詳しい)。

2.―(1)
7月1日、モスクワでロシアのプーチン大統領は、ロシア外務省職員らの前で演説をした。その際、以下の警告を発した。

<停戦体制継続を放棄したウクライナのポロシェンコ大統領は、国の南部・東部での紛争激化に対する責任を自ら負った。その際ロシアは、国際法の枠内にあり続けながら、ウクライナ及び世界中にいるロシア語系市民の利益を擁護するだろう。

世界秩序の一極モデルは、成立しなかった。西側が、この地球を「世界兵舎」に変えようと、他の国々に自分達の原則を押し付けるのを止めるよう望む。ロシアは自らの対外政策において、対決を通してではなく、協力や歩み寄りの模索を通じて、グローバル及び地域の問題解決の道を模索するべきだとの立場に断固立脚している。>(7月1日ロシア国営ラジオ「ロシアの声」)

2.―(2)
プーチンは、ポロシェンコが停戦を停止した背景には米国の思惑があると考えている。「他の国々に自分達の原則を押し付けるのを止めるよう望む」というのは、プーチンが米国に対して向けたメッセージだ。・・・・・・(以下略)

佐藤優直伝「インテリジェンスの教室」vol040(2014年7月10日配信)より

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