レストランや倉庫などで働く従業員の仕事ぶりを、会社が各種センサーやウエアラブル端末でモニターする動きが世界的に広がりつつある。そのように計測した行動データを解析して、接客や荷物運搬など各種作業の質や効率を高めるためとされる。が、一方で従業員のプライバシー侵害やストレスなどの問題も指摘されている。
●"Unblinking Eyes Track Employees" The New York Times, JUNE 21, 2014
●"Tesco accused of using electronic armbands to monitor its staff" The Independent, 13 February 2013
●"仲居さんにセンサー装着 がんこフードの「科学接客」" 日本経済新聞, 2014/6/27
冒頭の米ニューヨーク・タイムズ記事によれば、サンフランシスコの幾つかのレストランでは、給仕(ウエイターやウエイトレス)に特殊なバッジを装着させて、彼らの働きぶりを逐一計測している。このバッジには集音マイク、位置情報センサー、加速度センサーなどが内蔵されている。これらのセンサーによって給仕が店内のどこをどう移動したか、接客中にどんなことをどのように話したか、さらにはその時の姿勢やジェスチャーまで計測できるという。
米国では、こうしたモニタリング行為を特に禁止したり規制したりする法律はないが、原則として雇用者(この場合、レストラン)側が事前に、モニタリングを実施する旨を、従業員に知らせる必要がある。このようにして計測したデータを雇用者側がどう利用するか? そこには大きく2種類がある。
一つは計測データを個々の従業員と紐づけることはせず、あくまで「匿名で大量の行動データ」として一括解析し、職場全体の作業効率や生産性をアップするために使うやり方。もう一つはその正反対。つまり個々の従業員をピンポイントでモニター(有体に言えば監視、あるいは観察)し、各従業員の業績評価に使ったり、働き方の改善につなげるというものだ。
米国では、その両方ともやられているという。特に後者の、従業員をピンポイントで観察するやり方は評判が悪いかと思いきや、一概にそうとは言い切れないという。たとえば接客の仕方がなっていない給仕には、雇用者(この場合、レストランの店長)が「ここをこうすれば客は喜んでくれるし、追加注文も増えるはずだ」と教育する。
これによって成果が上がれば、レストランの収入ばかりか、従業員(給仕)の時給も上がり、客からのチップも増えるので、従業員にとっても望ましいことだという。また接客の仕方や売上成績の良い従業員はデータ解析から明らかになるので、彼らは他の従業員よりも早く昇進して店長になれるという。