安倍首相発表「日本再興戦略」と霞が関の利権---「残業代ゼロは優秀な人材を徹底的に安く使える仕組みに見えてしまう」

古賀茂明と日本再生を考えるメールマガジン Vol096(動画版 Vol018)より
古賀 茂明 プロフィール

それが1つは不十分なのと、移るといっても、今とまったく同じ仕事だったら、どこかの企業でもできますけど、やっぱり新しい企業、新しい産業に移りましょうということになると、一人ひとりの労働者の能力をもう1回、スキルアップするということが必要なんです。そのためには職業訓練、それからうまくその人に合った仕事を探してあげるという職業紹介、これが非常にいいサービスがないとただ単に辞めてみたら、いいところがあるんじゃないのということでは非常に無責任なことになるわけです。

その職業訓練と職業紹介の世界というのが、今、厚労省の利権の巣になっています。独法のJEED(高齢・障害・求職者雇用支援機構)が職業訓練で予算を独占して入札談合をやっていたとこの間出ていましたけど、そういう話とか、あるいは職業紹介、ハローワークが、はっきり言って、そんなに仕事をうまく見つけて、レベルアップした人をそこにつなげていくというような仕事はできていないですね。

そういうのを本当はもっともっと活性化して、お金ももちろんつぎ込まないといけないんですけど、それを厚労省に独占させるんじゃなくて、もっともっと民間企業を使って職業訓練をやっていく。今でも、製造業向けの旋盤工を養成するみたいなことをやっているんですけど、それだけじゃない、もっともっといろんな形のITとか、いろんな接客とか、そういうことのスキルアップができるような職業訓練をやり、これを職業紹介とうまくマッチングしていくというようなことを切り込んでやってほしかったんです。けれど、それは一切書いてないんですよ。

「残業代ゼロ」より「労働時間」を規制したほうがよい

古賀: 雇用関係の成長戦略で出てきているのが残業代ゼロということです。今までの日本の企業経営の大変な問題点なんですが、とにかく人件費をカットしようという経営をやってきたんです。中国や韓国、あるいは途上国に追い上げられた、そこで何とか生き残るためにというので、人件費が安い中国人に負けないようにするため、日本も負けないように人件費をカットしようというわけです、日本の特に製造業がです。それで正規社員を非正規にしやすいような規制改革と称してやったんですけれども、それで非正規がどんどん、どんどん増えてしまった。で、全体の所得水準が非常に下がってしまった。

ところが実は日本っていうのは少子化で働いてもらえる人の数が、どんどん減っていくというのがもう始まっていまして、今、ちょっと景気がよくなっただけですぐに人手不足になっていますよね。つまり、これからは人件費っていうのは高いのが当たり前だという世界になっていくんです。これはどんなにがんばってみてもそうなっていくんですけれども、そうすると企業の経営者は何を考えなきゃいけないかというと、人を安く使おうなんていう発想を持っていたら駄目なんですね。

安く使う発想でやっている限りは、もう中国と同じ土俵で同じ競争をして、じゃあ、もっと給料を下げろ、もっと労働条件を悪くしろという競争になっていく。そうじゃなくて日本人のほうがやっぱり人件費は高いけれども、それでも儲かるようなビジネスモデルに展開していかなきゃいけない。そっち向きにいろんな制度を変えていくという話が必要なんです。

ところが今回、出てきた残業代ゼロというのは違います。非正規雇用にどんどん、どんどん替えていってコストを削減するというのもだんだん限界に近づいてきた。そうすると正社員も、もっともっと安く使いたい、というのが経営者の今までの発想をまったく変えないでいくとそうなっちゃう。今のところは年収1000万円を超えるようなある程度、豊かな層に限定しますよということではあるんですけど、この条件はどんどん下げられる可能性もあります。

今までの議論の中では特に幹部候補生ですね。そういう人は働き方を変えてもらっていいんだ。あまり残業を規制なんかしないほうがいいんだというようなことを言っている経営者が非常に多い。これは実は、経営陣っていうのはいつも優秀な若者というか、支えてくれるスタッフがいるわけですね。企画だとか総務だとか、そういうところの将来、君は幹部候補だよというような人たちを徹底的に安く使える仕組みがほしいという感じに私には見えて仕方がないんです。

一応、言葉の上では「時間で測るんじゃなくて成果で測るんです。もっと創造力豊かにいい仕事をしてもらうためには新しい仕事の仕方が必要なんです」って、非常にきれいなことを言っている。けれども、日本人っていうのはやたらと働いている時間が長いんですね。そうじゃなくてもっと短時間集中して創造力を働かせて人と違うことを思いついて、いろんな新しいビジネスにつなげていきましょうという働き方を本当に奨励するのであれば、労働時間をむしろ短くするような規制をしたほうがいいと思うんですね。(・・・以下略)

古賀茂明と日本再生を考えるメールマガジン』vol096
(2014年7月4日配信)より

◆古賀茂明と日本再生を考えるメールマガジンvol096 目次

■今回の収録は、コロンビア戦敗戦直後

1.安倍首相発表「日本再興戦略」と霞が関の利権
 ●不満いっぱいの成長戦略。岩盤規制撤廃に期待したが・・・。
 ●職業訓練、職業紹介という厚生労働省の利権に切り込まず
 ●「残業代ゼロ」より「労働時間」を規制したほうがよい
 ●農協廃止は立ち消え。「競争力」をつけることを奨励しても、「競争」はさせない!?
 ●単なる株価対策としての法人税減税。官僚の利権、租税特別措置は手つかず
 ●素人が年金基金運用の株価比率を上げろという危険性

2.原発事故処理で、報道が少ない隙に密かに進行中の諸問題

 ●もし、東京電力の経営陣に入ったら
 ●電力の広域運用の主体は、経産省+電事連ではなく公取にすべき
 ●福島原発事故処理で、非常におかしなことが始まっている
 ●石原環境大臣の「最後は金目」発言

3.都議会ヤジ問題と集団的自衛権の容認問題

 ●都議会ヤジ問題、これで幕引きでは世界中の恥
 ●公明党にとって与党でいるメリットとは
 ●自衛隊がホルムズ海峡に行くのは憲法違反の可能性が高い