シー・ユー・チェン 第2回 「フィンガーズとユーミンと、ブロードウェイ・ミュージカル『ヘアー』」

島地 勝彦 プロフィール

チェン サンフランシスコに行ってみたら、フラワームーブメントの真っただ中で、どの通りも頭に花をつけたヒッピーの若者たちで溢れかえっていて、ピースサインを挨拶代わりにしていました。すっかり感化されて、帰国後はサイケデリックな音楽にのめり込んで「フード・ブレイン」というバンドに参加しました。

でも、あのころの自分を振り返ってみますと、世間知らずもいいところでしたね。企業の歯車の一個として生きることを否定して、親といえば体制そのものと思い込み、「The Greening of America」の思想にかぶれていたんです。

シマジ 『グリーニング・オブ・アメリカ』ですか。わたしもあの本は読みました。ヒッピー文化の基本的な思想を書いている本でしたよね。

立木 物質文明を否定して精神世界の探求へと向かっていった時代だったよね。

シマジ コリン・ウイルソンの『アウトサイダー』がよく読まれていましたよね。

チェン わたしも『アウトサイダー』は読み耽りました。それからヘルマン・ヘッセの『デミアン』や『荒野のおおかみ』に傾倒して、なにか自分たちが確立出来る別の価値観はないかと追い求めていました。青臭い話ですが、ある意味、もの凄く純粋だったんだと思いますね。

ヒノ それと比べるといまの若者は、体制に甘んじていて温和しすぎますね。

チェン その通りですね。そして、若者が元気だったあの時期を象徴するような存在が、ブロードウェイ・ミュージカルの『ヘアー』をひっさげて時代の寵児になったのが川添象郎さんですよ。

川添さんは「キャンティ」創業者のご子息なんですが、ニューヨークでフラメンコ・ギタリストをやっていました。その彼が、ブロードウェイで大当たりしたロック・ミュージカルの『ヘアー』を見て、これを日本に持っていこうと、とんでもないことを考えたんです。で、わたしも誘われてオーディションを受けまして、合格してメンバーに加わったわけです。

立木 あれはたしか全員素っ裸になる反戦劇だったよね。

チェン はい、出演者全員が全裸になるミュージカルということで、メディアも警察も興味津々で観にきていましたね。

ヒノ 『ヘアー』というのはヘアー丸出しという意味でもあったんですか。

シマジ そういうことだろう。もちろんチェンさんも丸出しだったんですよね。

チェン 当然です。わたしは自信を持って素っ裸になりました。

〈次回につづく〉

 

シー・ユー・チェン 1947年北京生まれ。30年の成功のトラック・レコードがあるブランドコンサルティング会社CIA Inc.のファウンダー兼CEO。"Japan Branding"を提唱し、ユニクロ、青山フラワーマーケット、東京三菱UFJ銀行PBO、出光、大崎Think Park、Peach、サウスウッド、Oisix Crazy for Veggy等の新業態ブランドの原型を構築し成功に導く。Innovation Prototypingを実践し、プロジェクトフローとリアルな検証プロセスを通じてリスクを軽減させ、成功率を高めている。
島地勝彦 (しまじ・かつひこ) 1941年東京都生まれ。青山学院大学卒業後、集英社に入社。『週刊プレイボーイ』『PLAYBOY』『Bart』の編集長を歴任。現在は、コラムニストとして活躍中。主な著書に『乗り移り人生相談』『知る悲しみ やっぱり男は死ぬまでロマンティックな愚か者』(ともに講談社刊)など。Webで『乗り移り人生相談』『Treatment & Grooming At Shimaji Salon』を連載中。最新刊『男と女は誤解して愛し合い 理解して別れる---乗り移り人生相談傑作選(1)』(日経BP社)が好評発売中!

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