「仕事ができる」官僚は、新しい規制を次々に生み、どんどん権限を拡大して、予算も獲得していく。
決して悪意はないのだが、結果として官僚機構は肥大化し、国民の税金を貪り食っていくことになる――。
そんな霞が関の実態を具体的な「規制」に焦点を当てて暴いた『日本人を縛りつける 役人の掟』が小学館から上梓された。
著者で、規制改革担当大臣の補佐官などを務めた元官僚の原英史・政策工房社長に、霞が関の問題点や安倍内閣が取り組む公務員制度改革の行方について聞いた。
(聞き手はジャーナリスト 磯山友幸)
---官僚に対する国民の批判が高まり、「脱官僚依存」を掲げた民主党が政権を奪取したのは2009年でした。その後、国民の官僚批判はすっかり影をひそめましたが、霞が関は変わったのでしょうか。
原 物事は何も変わっていないというのが私の認識です。官僚批判が影をひそめたのは民主党政権が失敗したからです。民主党は残念ながら、日本の官僚体制の問題点を理解せず、政治主導をはき違えました。本質を理解しない間違った政治主導で政権が機能不全に陥りました。
その結果、国民からの信頼を失ったということです。民主党の政治主導よりも官僚任せの方がましだと国民が思ってしまったのです。
---問題の本質とは何でしょうか。
原 永田町と霞が関が日本国の経営陣として機能していないということが最大の問題です。今、コーポレートガバナンスの強化が叫ばれ、企業の経営体制が問題視されています。株主などの利益を背負った取締役が社長を監視し、社長をトップとする執行役が経営実務を担う。これが企業ガバナンスの1つの形です。
国も、国民の利益を背負った国会議員が「社長」である大臣を監視し、大臣をトップとする官僚機構が実務を担うのがあるべき姿です。
ところが、官僚は大臣を社長だとは思っておらず、事務次官が社長だと思ってきた。政治家にはできるだけ関与させずに自分たちだけが政策を策定・実行していく体制が出来上がっていたわけです。
---民主党はそれを否定しました。
原 役人を政策決定から追い出し、自分たちの思い付きや信念で政策を決めて実行しようとしました。1つの典型例が沖縄・普天間基地の移転問題でした。つまり、民主党は公務員制度改革の本質をまったく理解していなかったのです。