デキる社員は「魚の食べ方」で分かる 知られざる世界1位の日本企業は採用も社訓も一味違う

週刊現代 プロフィール

「お客さんから『こんなものを作ってこい』と言われたら、七転八倒しながらでもやるしかない。でも、優秀な成績で大学を出た若い社員は、そういう注文を受けると、難しい数式の並んだような立派なレポートを書いてきます。そして結論のところに『……よって、これはできません』とある。しかし、高い給料を払って『できない』ことを証明する人間を雇う必要はどこにもないでしょう。

本当の創造とは、そんな秀才からは生まれません。実際にはどうやったらいいかまったく見当もつかないけれど、ともかくやってみる。そうしたら『やっているうちにできちゃった』ということがよくあるんです」

浜松ホトニクスでは、大学を卒業したばかりの社員に、「タマ洗い」という光電管のガラスをブラシで洗う作業をひたすら命じていた時期がある。

「せっかく大学で学位をとってきたのに、ひたすらタマ洗いを命じられ、音を上げた社員もいます。しかし、そうした単純な作業をくり返すことで、『きれいな状態とはなにか』ということについて、突き詰めて考えるようになる。ガラスの表面一つとっても、実はわからないことだらけなんです。

その大卒の社員はやがて物質の表面に関して強い問題意識を抱くようになり、世界で初めて『表面のきれいさ』を証明する計測技術を開発してしまいました」

「明日の予定を聞くな」

もともとは特別な技術も研究所も持たず、「あるのは昔の中学の物理と化学の教科書くらいだった」という浜松ホトニクスが、ノーベル賞級の研究を支えるまでに成長できたのは、さまざまな無理難題を前にした社員たちが「ああでもない、こうでもない」と続けてきた試行錯誤の結果だろう。

晝馬氏の目下の夢は、レーザー核融合を利用して、日本の高い電気コストを大幅削減すること。とてつもなく大きな目標だが、無理難題を前にした新しい挑戦は続いていく。

「型破り」なやり方で社員を教育するという意味では、三鷹光器もかなりユニークだ。同社は社員数わずか63名という町工場並みの小企業だが、望遠鏡などの天文機器や宇宙衛星に搭載する観測機器でずば抜けた技術力を誇っている。また、医療用機器の分野では世界的カメラメーカー、ライカとも提携し、手術顕微鏡システムなどで世界一のシェアを誇っている。

同社の創業者で代表取締役会長の中村義一氏は、次のように語る。

「我が社の製品は、世界の最高レベルの会社と競合しています。しかし、規模は町工場ですから、資金力などではとてもかなわない。だから人材力がすべてです。生半可な教育では、世界一のモノづくりができるように社員は育ちません。特に最初が肝心なのです」