6月12日に開幕したブラジル・ワールドカップも、グループステージの終わりが近づいてきました。
スペインに代表されるパスサッカーから、局面を独力で切り開ける「個」がクローズアップされた大会になる---前回のコラムでそのように展望しましたが、ここまでの戦いを振り返ると、およそ私のイメージどおりになっていると感じます。
FIFA(国際サッカー連盟)はエキサイティングなゲームを求め、得点機会を増やそうとしています。そのためのひとつの方策が、ファウルの厳罰化でした。結果、ゴール数が増えています。
守備側が手を使って攻撃側を止めたプレーは、厳しく対処されます。ブラジル対クロアチアの開幕戦で、日本の西村雄一主審がブラジルに与えたペナルティキックが、今大会の方向性を決定づけたのでした。
それによって、攻撃側の選手は圧倒的優位となりました。手を使って相手を止めるプレーは反則を取ってくれることがわかっていますから、スピードのあるドリブラーは思い切った仕掛けができるようになりました。ボールのないところでのランニングに長けた選手も、持ち味を存分に発揮できます。
そこから見えてくるものは何か。
2列目と呼ばれる中盤の選手のスピード感、具体的には後方からの飛び出し、マークを外して相手陣内へ飛び込んでいく動きがクローズアップされています。自分で仕掛けることができ、長い距離も走れるアリエン・ロッベン(オランダ)が輝きを放っているのは、FIFAが示した方向性に基づいていると言えるでしょう。
日本はどうだったでしょうか。
逆転負けを喫したコートジボワール戦の流れを、日本は最後まで修正することができませんでした。選手たちは「自分たちのサッカーができなかった」と話していましたが、それ以前に基本的な部分で劣っていたとも感じます。
2列目からの飛び出しに対応するための、攻守の切り替えで相手にまさった場面があったでしょうか。どちらのボールなのかはっきりしない奪い合いで、必ず自分が支配するんだという意気込みを見せたでしょうか。
そして、ボールをつかみきったでしょうか。クロスボールやシュートを、身体を投げ出してブロックできたでしょうか。
答えはいずれも「NO」でしょう。技術や戦術を語る以前の段階で、日本は負けていた気がしてなりません。