一方、悪い流れのままに交流戦を終えてしまったのが、阪神です。セ・リーグの他の5球団にはそれぞれ交流戦で得たものがあったと思います。例えば、東京ヤクルトなら打線が活躍し、その怖さを相手にも植え付けることができました。横浜DeNAはユリエスキ・グリエルが加入したことで打線が活発になり、簡単には負けないということを印象付けました。そして中日は、本来の粘り勝つ野球を見せてくれましたね。
しかし、阪神を見てみると、正直言って、Bクラスとの差が詰まっただけで、ほとんどいいところがないままに終わってしまったのです。勝ち星がなかなか積み上げることができなかった最大の要因は、戦ううえでのビジョンがないということに尽きます。だからこそ、投打がかみ合っていないのです。
阪神の先発投手を見ていると、「最少失点に抑えよう」ではなく、「何が何でもゼロに抑えなければいけない」と、常に必死の形相で、危機迫ったピッチングをしています。その理由は、打線への信頼がないからでしょう。打線には「なんとか1点を取ってやろう」という気迫が見えません。チャンスや得点は、自分たちで獲得したものではなく、単に結果的に得ただけのもの。だからこそ、次につながらないのです。
そして巨人とは対照的に、チーム全体でカバーし合うことができていません。例えば、9日のソフトバンク戦でのことです。0-5で迎えた6回裏、先頭の緒方凌介が四球で出塁し、次の上本博紀が右中間に二塁打を放ちました。俊足の緒方ですから、生還できる可能性は高かったと思います。しかし、緒方は二塁ベースを踏まなかったために、一度二塁に引き返してベースを踏み直したために、結果的に三塁にとどまったのです。結局、阪神はこの回、1点も奪うことができませんでした。すると、ベンチは緒方の懲罰交代を命じたのです。
私から言わせてもらえば、確かに緒方は走塁ミスを犯しました。しかし、考えてみてください。走塁ミスをしたとはいえ、無死二、三塁のチャンスだったのです。にもかかわらず、大和、鳥谷敬、ゴメスと3者連続で凡打に終わりました。このことの方が問題ではないかと私は思うのです。それを無得点に終わったことが、緒方だけの責任のようにしてしまった首脳陣には、少し疑問を抱きました。
現在、阪神はギリギリAクラスにとどまってはいますが、貯金は全部使い果たしてしまいました。4位・中日との差はわずか1ゲーム。そして、ペナントレース再開の1カード目が中日との3連戦です。今後の阪神を占う意味でも重要な試合となるだけに、注目のカードです。和田豊監督は「ペナントレースまでに、しっかりと立て直す」と語っていましたが、「今季の阪神はこうやって戦っていくんだ」というビジョンをまずは示してほしいと思います。