「総合商社で働きながらNPOの理事をするのは、ロジカルなキャリアだと思っています」---パラレルキャリア実践者に聞く【前編】

安藤 光展

「健全な欲求不満」が重要だと思う

安藤: パラレルキャリアに関して、海外ではソーシャルセクターの規模が大きいので、NPOから企業、企業からNPOといったキャリアプランもあると聞きますが、そのあたりの実感値はどうですか?

日野: 市場全体ではどうかわかりませんが、キャリアプランのわかりやすい例として、大学生を起点に考えてみましょう。

実は年間100人くらいの大学生OB訪問を受けて思うのは、人間、誰しもが「認められたい」という気持ちがあるということ。NPOやソーシャルアクションは、誰かが困っているという社会課題が前提にあり、それを解決する仕組みなど、"私は社会に貢献している"という自己承認欲求を満たしやすい領域なのかもしれません。

安藤: 僕はOB訪問を受けることはないのですが、CSRコンサルタントになりたい、とか、CSRの論文をチェックしてほしいとかという年何件かきます。ただ、キャリアの前に社会貢献をしたいという「手段の目的化」が起きている気もします。そのあたりはどうお感じですか?

日野: そういう意味でいうと、「To Be」思考の大学生が多い気がします。つまり、社会起業家やソーシャルビジネスをしたいという人たちですね。私の会社で言えば、"商社マンになりたい"というイメージです。

でもそれは違うと思っていて、「To Do」を重要視するように伝えています。「To Be」はあくまでも手段ですよね。目標を達成するための手段として、ソーシャルビジネスをしたり、社会起業家になったり、商社マンになったりするわけです。

「健全な欲求不満」が重要だとも思っています。例えば、「A」という現状があるとして、それが嫌だと感じるのであれば、どうやれば「Not A」という未来にいけるかという思考が必要だと思うのです。そのギャップを埋める作業がビジネスを作ることにつながるのです。もちろん、これはビジネスだけではなく、社会貢献やCSRも同様の考え方が大切だと思います。

安藤: 「手段の目的化」はどんな人にも、どんな業種でも起こることです。この課題を解決するには、ビジネスの経験を積むしかないのでしょうか?

日野: もちろん、経験もあると思いますけど、「For What?」を突き詰めていくことで改善できると思います。何のために今行動しているかを深く考えることで自分の行き着く先をイメージできるでしょう。そもそもの一番大きな原因は、大学生に、こういった話を議論する場がないことかもしれません。

考える力を大学生につけてあげることが重要です。社会の最小構成単位は人。ここを変えるには、最終的には教育しかないのかもしれませんね。どんなに科学技術が発達しても、人が変わらなければ社会は変わらない。これは、日本でもフィリピンでも、世界でも同じことが言えます。