【ポルトガル シントラ発】
私はこれから2日にわたって(※訳注:5月下旬)、欧州中央銀行が主催するフォーラムに出席する。アジェンダに書かれていることが何であるにせよ、議題は、ヨーロッパが単一通貨を時期尚早で採択したことによって引き起こされた、破壊的な通貨の混乱についてだ。そして、ヨーロッパの金融とマクロ経済学の災いが、かつては停滞していた領域、つまり雇用創出における予想外の目覚ましい経済成功に影を落としてしまったことで、話はさらに悲観的な様子を呈している。
そんな話は、聞いたことがないって?------まあ、そうであっても、驚きはしない。なぜなら、アメリカでは、ヨーロッパ、特にフランスについては、かなり悪く報道されているからだ。アメリカでの政治の話は、ロビンフッド主義とは逆が支配的だ。富裕層は重税だと雇用を創出しなくなるため厚遇し、一般の労働者はほかに選択肢がなくならない限り仕事に就こうとしないため、厳しく対応する------経済の成功はこうすることでもたらされるという考え方なのだ。
このイデオロギーに沿って考えれば、高い税率と手厚い社会保障制度を備えたヨーロッパは、何もかもが間違っていることになる。したがって、ヨーロッパの経済制度は間違いなく崩壊しているものとして、単なる仮定に過ぎないのにもかかわらず、事実として報道されているのだ。
しかし、現実は報道とはかなり異なる。確かに通貨の混乱によって、ヨーロッパ南部は経済危機に見舞われているが、フランスを含む北部は、大多数のアメリカ人が実現するよりもはるかにうまくやっている。とりわけ、ほとんど知られていない驚くべき事実は、フランスの主な就労年齢層(25歳から54歳)の就業率は、同じ年齢層のアメリカ人よりもはるかに高い。