記号を通して数学を本質から理解する、
数学の再入門に最適の一冊。
数学は現代を生きる人に欠かせない教養の一つ。その数学を理解する鍵となるのが、∑、lim、dy/dx、∫ydxといった記号たち。こうした記号には、無限をどう扱うのか、空間をどう表現するのか、面積や体積をどう求めるのかといった数学の思想や原理が込められています。
難解にみえる記号は、複雑で抽象的な問題を誰もが同じく扱えるように、問題の本質を見抜いて作られたものなのです。
■17世紀中頃ドイツに生まれ普遍的天才と呼ばれたライプニッツはイギリスのニュートンと同時代に生まれ,同時期に微積分学を結晶化させました。
ニュートンの創造した微積分学は,内容はまったくライプニッツのものと同じであったにもかかわらず,評価されたのは英国内にとどまりました。
一方,ライプニッツの微積分学は当時から,広くヨーロッパの数学者に採用され,その学問は強く支持されました。そして,現在数学の教科書で用いられている微積分学は,そのほとんどがライプニッツの手によるものです。
どうして,これほどまでに差がついてしまったのでしょうか。
ニュートンは,絶対時間と変化の視点に立ち,ライプニッツは,無限小とその働きを記号の中に求めていきました。
ライプニッツの夢は,すべてのものを記号化するという《普遍的記号法》でした。これが,数学の原理として,数学を途方もなく発展させることになったのです。それは,思想を記号化したからです。
この本の記号は,ほとんど,ライプニッツの発明によるものです。ライプニッツの記号化は,物事の本質を見抜き出し簡略化をすすめた歴史であり,数学の進歩は簡略化の発明をともなってきました。
それは同時に,記号を理解し活用することを,数学を学ぶ者に要求しているのです。記号を理解し,自由に使えるようになることで,数学の学習に役立つ知性が磨かれるのです。
記号の意味を理解し,その応用をマスターすれば,数学は楽しい実りを誰にも約束してくれるものです。大学の教養数学にはこうしたエッセンスが凝縮されているのです。
本書の第1章では, Σによって数列の和の単純化と簡略化を図ります。
第2章では, limによって,極限移行という無限小化の演算を定義しています。
第3章でdy/dxによって,関数の増減を接線の傾きによって測るという前代未聞の発想を記号化しています。
第4章では∫ydxがdy/dxと逆演算という表裏の関係にあることを突き止め,積分の計算に到ります。
そして第5章で扱う定積分の計算はケプラーがワインの樽の体積測定からヒントを得て,一般図形の面積計算を理論化したことに始まります。これによって,曲線に囲まれた図形の面積は曲線が関数表示できれば,その面積を求めることが可能になったのです。
以上の本書の流れから,「微分積分学の誕生とその応用」の歴史的な経緯を,垣間見ることで,いわゆる微分積分の構造が理解できるでしょう。そして,これらの偉大な知の発見は,16~18世紀のヨーロッパの叡智の結晶といえます。それを,感じ取っていただければ幸いです。
■ここで,数学の学習の仕方を考えてみます。
記号の意味を理解ししっかり応用できるように,本書には問題を豊富に載せています。
本文中の例題を読んで,類題が一人で解けるかどうかを試してみてください。このとき例題の答えを模倣して解けるならば,きちんと理解していると考えてよいでしょう。本書では類題として,そのような問題を選んでいます。
しかし一般の問題は類題と異なり,このように単純ではなく,もっと複雑で難しいものです。発展問題,応用問題などと続き,思考を深める問題が多いものです。そのような問題を解く場合のことを考えてみます。