文:吉川尚宏(A.T.カーニー株式会社パートナー)
5月13日にNTTが発表した「光コラボレーションモデル」が総務省の情報通信審議会でも論議を呼んでいる。
これはFTTH(Fiber to the Home)を卸役務で提供するものであり、卸価格や提供条件については相対交渉で決まる。このモデルについては賛否両論あるが、もともとFTTH市場が飽和し、小売モデルだけでは成長限界に直面したために投入されるモデルともいえる。もはや固定ブロードバンドよりも、モバイルブロードバンドが主流になろうとしてきている時代にあって、FTTHの卸役務の是非が2020年の日本を見据えた情報通信政策の根幹になるとはとても思えない。
むしろ携帯電話用の無線免許をもたない固定通信事業者やCATV事業者等がモバイル事業に参入する際の障壁が高いことがより大きな問題である。その意味では、2020年に向けた情報通信政策の柱はモバイル事業における競争促進や参入促進であり、モバイルのほうこそ、より積極的に卸役務で提供すべきである。