二宮清純レポート
31歳、楽天ゴールデンイーグルス二塁手
藤田一也 挫折が生んだ「守備職人」の覚悟

週刊現代 プロフィール

ショートでプロ入りした選手では6年先輩に二岡(巨人-日本ハム)がいました。スピードと肩の強さでは二岡の方が勝っていましたが、プレーの正確性では藤田の方が上でしたね」

守備ばかりが注目される藤田だが、3年春と4年春にはリーグの首位打者を獲得している。4年の夏には大学日本代表にも選ばれ、台湾に遠征した。

この藤田に早くから目をつけていたのが当時の横浜の近畿地区担当スカウト・宮本好宣である。宮本の見立てでは「ランク付けは1番」だった。にもかかわらず、ドラフトでの指名は4巡目。実は藤田の評価を巡って、球団内で意見が対立していたのだ。

宮本が内幕を明かす。

「なかには藤田の将来性に否定的なスカウトもいました。〝体が華奢でパワーがない〟〝足も速くない〟とかね。僕は〝冗談じゃない!〟と思いましたよ。

というのも、数字に表れない能力を評価するのが僕らの仕事なんです。打球に対する一歩目の速さ、フットワークの巧さ。こういうものは数字には表れない。いずれにしても僕は、彼こそは石井琢朗の後釜になる男だと確信していましたよ」

先輩から盗んだプロの技

石井琢朗。ドラフト外入団。しかも、もともとはピッチャーながらプロ入り4年目で内野手に転向し、横浜で4度のゴールデングラブ賞に輝いた。

打っては通算2432安打。盗塁王4回。球史を飾る名ショートである。

藤田が横浜に入団した'05年、石井は押しも押されもせぬ不動のショートストップだった。この年も全146試合に出場している。

同じ右投左打。藤田にとっては〝高い壁〟だった。

「入った時、琢朗さんの後ろで、ずっと守備練習をやらせてもらいました。驚いたのは下半身の強さ。ピッチャーをやっていたこともあるのでしょうが、動きが安定していて送球が絶対に乱れない。送球ミスなんて、ほとんどなかったんじゃないでしょうか」

当時、35歳の石井は23歳の〝後釜〟を、どう見ていたのか。

「守備の能力は入った時から高かった。捕球の際のボールの入り方からスローイングまで無駄な動きが全くなかった。ポジショニングも良かったですよ」

ただし、と石井は言葉を切り、続けた。