第1回ゲスト:黒鉄ヒロシさん (前編)
「男の文化は伝承されるもの。我々も次の世代に伝えていかなくてはいけません」

島地 勝彦 プロフィール

黒鉄 大人と子どもの決定的な違いは、精神的な粘膜を感じられるかどうか、でしょうね。男は元来、"一人遊び"を愉しめる生き物なのだと思います。そこに気がつくかどうか、です。

島地 ごもっとも。一人でいると寂しく、群れをつくりたがるのは女と子どもです。一人の時間を愉しめてこそ大人の男でしょう。バーのカウンターは人生の勉強机です。読者諸兄には、タバコの煙を燻らしながら静かにウイスキーを飲んでいるだけでさまになる男になってほしいですね。

日野 憧れますが、正直、入口がわかりません。

黒鉄 そこでまた話は伝承に戻るわけです。いつも安い居酒屋、同じようなメンツ、酒肴は会社と上司の悪口。これでは入口は見つけられません。

島地 最もわかりやすいのは、素敵だと思える大人の男をマネすることでしょうね。私の場合、父親がピースを吸っていたから最初の煙草はピースでしたが、シバレンさんがラークを吸っていると知ると、即座にラークに変えました。私の場合、シガーもゴルフもシバレンさんから学び、開高健さんとはパイプの共犯者になった。そして今東光大僧正からは"人たらし術"を盗み取りました。憧れの人が近くにいれば、まずはその渋い姿を真似てみる。そこが入口です。

真似て、繰り返すことで自分のスタイルになる

黒鉄 男の文化は、日本の「○○道」に通じるのかもしれません。先輩という師匠に導かれ、真似から入り、何度も何度も繰り返していくうちに自分の型ができてきて、最終的には自意識を超越した所作になる。かっこよく見せようという意識がないから、力が抜けて自然で、洒脱で、なんともいえない美しさが宿る。

日野 なるほど、若造にはわからないわけですね。

黒鉄 島地さんは、一人でいてどんなときに満ち足りた気持ちになりますか?

島地 日常的にあるのは夜、原稿を書き終えた後ですね。葉巻に火をつけ、シングルモルトと一緒に1時間ほどかけてゆっくり愉しむ。どの葉巻を吸うか。グラスはどれを使い、ウイスキーは何を選ぶか。想いを巡らすプロセスも含めて、最高に充実した時間ではないかと思います。

一人の時間を愉しむには自分を律する必要がありますよね。誰も見ていなくてもお洒落をする。これが基本です。家で飲むときも安物のグラスではなくバカラを使いますし、何も予定がなくても6500円するイタリア製のパンツを履いていますよ。