第82回 ココ・シャネル(その四)ハンドバッグは「自分の墓地」---毒舌をふるった高級ホテル暮らし

福田 和也

「あなたは肩甲骨に何を着せるの?」

この布、二十二年前に私が使ってたじゃない、どうしてそんなものを・・・・・・、いや、ちょっと面白いかもしれない、風合いはいいし、軽いわね。

「いいこと、私たちは修道院のために働いているんじゃないのよ。黒のレースを取ってちょうだい」

シャネルは、大嫌いだった日曜日に死んだ。
彼女は、午後一時にリッツ・ホテルで、貌をつくっていた。
彼女は外套を羽織り、ベージュの手袋をはめる。
キャデラックの黒いボディは、陰気な群衆の表情を濃やかに映しだしていた。
そうしてシャネルは、リッツの玄関を出た。
競馬場を一周するつもりだった。
その日、横になっていて突然、発作を起こしたシャネルは、自分でアンプルを割る事ができなかった。

そばにいたメイドに言った。

「ひとはこんなふうに死んでいくのよ」

『週刊現代』2014年6月21日号より

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