あなたは会社を辞めますか「がん社員」の苦悩——55歳から急増する発病、そして再発

きつい闘病社内の白い目 蓄えはどんどん減っていく……
週刊現代 プロフィール

「胃をすべて取って食道と腸をつないだので、食事はゆっくり少量ずつしか食べられません。建設会社で営業部長をしていましたが、夜の接待もできない。胃液が出ないので、お腹もすぐに壊してしまうんです。通勤途中、一駅ごとにトイレに駆け込むこともしょっちゅうありました」

食事も以前と同じように取れなくなれば、体力はもちろん低下する。残業もできず、ラッシュ時に電車で通勤することは厳しい。

「私の場合、朝10時から夕方5時前までに勤務時間を短縮してもらっていました。体力的な問題もそうですが、つらかったのはおならの問題。消化不良となるのでおなかにガスが溜まりやすく、極めて臭い。妻も激しく嫌がるほどでした。

恥ずかしいのと人に迷惑をかけたくないのとで、行動範囲がどんどん狭まっていくんです。こんな後遺症があるなんて、医師も教えてくれませんでしたし、本にも書いてありませんでした」(前出・上田さん)

がんの部位によっても後遺症はさまざまだが、患者になって初めて知る苦痛は多い。一見、回復したようであっても、がん経験者と未経験者には、大きな溝があるのだ。

収入は5割減

必然的に、仕事はセーブせざるを得なくなっていくが、仕事へのプライドが消えるわけではない。自身の体の変化を受け入れることができないと、「こんなはずじゃない」という葛藤に悩まされる。

吉田道雄さん(74歳)は、休職後に職場復帰したときのことをこう振り返る。

「現役時代に前立腺がんを患い、3ヵ月休職したあと、元の職場に戻りました。放射線治療の後遺症で、下半身が重だるくてつらかった。再発はしないか、これから自分はどうなってしまうのか、不安ばかりでしたが、それは隠して意地でも仕事は続けました。

それなのに、職場では『大丈夫?無理しないで休んだら』としょっちゅう声をかけられる。ありがたいのですが、その労りの言葉で、忘れようと思っているのに自分ががん患者であることを思い出してしまうんです。自分としては、これまでと変わらない。以前と同じように仕事ができるんだと思いたい。正直、『うるさい、放っておいてくれよ』と思っていました」

吉田さんが仕事にこだわり続けた理由は、「自分が認められる場所が必要だった」から。そう思って仕事に復帰するがん経験者は多いが、当人の思いとは裏腹に、企業側の判断は冷酷だ。

「復帰する際は、会社の産業医と面談をしてもらって、勤務のスケジュールや部署を決めていくことにしています。実際には、元のポジションに戻る人はほとんどいない。