現在、米国FRB(連邦準備理事会)は金融緩和策の出口を模索している。今の金融緩和策縮小のペースを考えると、今年10月頃には緩和策による資金供給量がゼロになる。イエレン議長の発言では、そこから一定期間をおいて金利が上昇すると見られる。
市場関係者の予測では、「来年中ごろまでには、金利引き上げの条件が整うはず」との見方が多い。足元の経済回復が順調に継続すると、恐らく来年の春先以降、FRBの出口戦略が明らかになるだろう。
金融緩和策で最も難しいのは、出口戦略=金融政策の正常化の時期とその手法だ。正常化が速すぎると、景気回復の腰を折ってしまうことが懸念される一方、タイミングが遅れるとバブルの発生などの弊害が大きくなるからだ。
金融緩和策の正常化による重要な問題の一つは、債券価格の下落=長期金利の上昇だ。金融緩和策では、多額のお金を市中に供給するため金利は低位で安定する。ところが、金融緩和策が解除されると、資金供給が止まり金利は上昇しやすくなる。
特に長期金利はその影響を大きく受ける。来年、FRBが金融緩和策から引き締めに転じるとすれば、米国債の流通利回りが上昇=国債価格が下落することは避けられない。ということは、多額の国債を保有している主体には多額の損失が発生するはずだ。
今までFRBは金融緩和策を実行するために、多額の米国債や住宅ローン担保債券を購入してきた。問題は、保有するそれらの債権から多額の含み損が発生することだ。つまり、FRBのバランスシートが毀損する可能性が高いのである。