ビオワイン、あるいはヴァン・ナチュール、自然派ワインという言葉を、最近よく聞くようになった。これらのワインは実は実態がはっきりしていない。原因は、ビオワイン、ヴァン・ナチュールともに、厳密な規定があるわけではないからだ。
ワイン造りというのは、実に厄介な代物である。畑の病害、セラーでの微生物汚染や酸化という問題を常に抱えている。そのため1960年ごろより、生産者はケミカルに頼るようになる。除草剤や化学肥料を与えられた葡萄は、免疫力を失い、発酵力が弱まる。そのためセラーでは、多量のSO2(果汁の酸化、微生物汚染を防止する添加剤=二酸化硫黄)や、培養酵母を使わざるを得なくなっていく。
こうして大量に確実なワインが生産されるようになったが、同時にワインそのものの個性も失われた。また本来は自然の力を得て、人間の体に良いものを作っていたはずのワインに対し、それでいいのかと疑問を抱いた人たちが作り出したのが、自然派ワインと呼ばれるワインなのである。
比較的新しい言葉や概念であり、ヴァン・ナチュールという言葉自体、1986年ごろから語られはじめたにすぎない。しかしややこしいのは、ビオワイン、ヴァン・ナチュールともに規定はないものの、生産者や飲み手は、ヴァン・ナチュールとビオワインもしくはオーガニックワインを区別していることにある。