最近の欧米などの先進国の経済状況を見ると、低成長と低金利が定着しているようだ。その背景には、各国の景気回復の救度が緩やかなことがある。経済の活動が低水準にあるため、金利が上昇しないのはむしろ当然のことと言えるかもしれない。
また、主要国の供給能力が需要を上回るデフレギャップが存在することもあり、物価水準が低位で安定している。そのため期待インフレ率が上昇しないことも、金利が上がらない要因の一つになっている。
2000年代初頭以降、多くの先進国が不動産バブルに巻き込まれた。世界的に経済活動は活発化した間、有力企業の生産能力は大幅に上昇した。しかし、不動産バブルが弾けると、生産能力の拡大は過剰供給能力となりデフレギャップを作り出すことになった。
リーマンショック以降、欧米諸国の中央銀行は思い切った金融緩和策を取って、景気刺激に動いた。その結果、漸く、主要国の経済は回復に向かう兆しが鮮明になっている。ところが、回復の速度が如何にも緩やかなのである。
経済専門家の中には、「低成長が定着しつつある」と警鐘を鳴らす向きもある。そうした状況を打破すべく、各国の中央銀行はさらにお金を供給して資産価格の押し上げ、景気回復の加速を図っている。
その結果、株価や一部の不動産価格が上がり始める様相を呈しているものの、それが期待インフレ率を高めて、経済の正常なサイクルに復帰するまでには至っていない。まさに、米国をはじめ主要先進国は“低成長・低金利”の罠にはまり込んでしまったようだ。