現役時代、50戦7勝だったステイゴールドが、史上7頭目の「三冠馬」オルフェーヴル、ダービー(6月1日開催)出走予定の「2歳女王」レッドリヴェール、「天皇賞・春2連覇」フェノーメノ、「GⅠ4勝」ゴールドシップといった大物産駒を次々と輩出するまでの軌跡を描いた、『黄金の旅路 人智を超えた馬・ステイゴールドの物語』がこのたび講談社から刊行された。そこで今回、著者の石田敏徳氏が、ステイゴールドの調教助手を務めた池江泰寿氏(現調教師)に特別インタビューをした。池江師は、知られざるステイゴールドの現役時代のエピソードから、ステイゴールド産駒とディープインパクト産駒の違い、ダービー出走予定のトゥザワールドとトーセンスターダムの分析、そして、いよいよ今夏デビュー予定の〝注目馬〟アッシュゴールド(オルフェーヴル、ドリームジャーニーの全弟)への期待まで、縦横無尽に語ってくれた。
──調教助手として携わった現役時代、競走馬としてのステイゴールドにはどんな印象を抱いていましたか?
池江:とにかく「我の強い馬だった」というのが最大の印象ですね。
現役時代、一緒に戦ったスペシャルウィークやテイエムオペラオーなどと比べても、ステイゴールドは遜色のない能力を秘めてはいたんです。気性さえもう少し丸くなって、人間のいうことを聞いてくれるようになれば十分、そうした馬たちにも先着できる自信がありました。なのに、なかなか勝てない。スタッフの一人として、それが凄く歯がゆかったですね。
周囲からはブロンズ、シルバーコレクターなどといわれましたが、決して2着、3着にしかこられないレベルの馬ではなかった。勝てる能力を秘めているのに、勝たせることができないという歯がゆさを感じ続けていました。
ではなぜ、勝てなかったのかといえば、気性の激しさ、難しさ、要は我の強さが大きな要因。ただ、競走馬にとっては気性というファクターも能力のひとつですから。
──調教や運動の際には本当によく立ち上がったみたいですね。
池江:立ち上がりましたねえ。それに厩舎にいるときでもステイゴールドの馬房の前を通ると、コブラみたいに凄い勢いで人間に襲いかかってくるんです。とても草食動物とは思えない、そう、まるで肉食獣のような激しさを感じる馬でした。