慎: プロフェッショナルたちにその仕事ぶりをお伺いする第4弾は、スシローのNo.2として企業変革を進めてきた加藤智治さんです。長らく関わられたスシローを2月末に退社されて、現在、充電期間中ということですが、本当にお疲れ様でした。
加藤: ありがとうございます。
慎: まず、皆さんに最初に同じ質問をしているのですが、加藤さんのお仕事は何ですか?
加藤: 「ターン・アラウンド・マネジャー」ということでしょうね。組織を改革するリーダーシップをとる人ということで、言い尽くされている言葉かもしれませんが、それが自分の生業を定義するにはいちばんフィットするんじゃないかと思います。
慎: そのターン・アラウンド・マネジャーになることを意識されたのは、どのくらいの時期からだったのでしょうか?
加藤: マッキンゼーにいたときですね。学生時代からアメリカンフットボールをやっていて、社会人になっても9年間続けていたんですが、選手時代はどちらかというと個人技でチームに貢献するタイプだったんです。キャプテンとしてまとめるというよりは、プレイヤーとしていかに秀でるかということで、自分磨きの挑戦をしていたんです。
ところが、マッキンゼーに入ってたまたま最初にガッツリやったプロジェクトが、ある日本の大手家電メーカーのターン・アラウンドのプロジェクトだったんです。
コンサルティング会社の仕事にも大きく2系統あって、たとえば3ヵ月くらいのスパンでいろいろなリサーチをして、その会社の経営チームに対して「こんなことをやったらどうですか」と提案するような形のプロジェクトもあれば、一方では会社のなかに入り込んでその会社の人たちと一緒に汗をかいて会社を変えていくというハンズオンのプロジェクトがあります。
最初にハンズオンのプロジェクトとして担当させて頂いたのが大手家電メーカーの半導体事業部の組織改革プロジェクトだったんですが、当時を振り返ると日本の半導体産業も岐路にあって、かなり社運を賭けたプロジェクトだったわけで、関わっていた方々も後々その会社の社長になられたような方たちだったんです。そういった次の世代を担うようなミドルマネジャーを含めて、何十人という規模でそのプロジェクトに関わっていて、僕らも駆け出しのコンサルタントとマネジャーと3、4人で、会社のなかの一つの部屋がプロジェクトルームになっていたんですが、そこに毎日住み込み状況でやっていました。
クライアントである自分たちの人生の先輩のような人たちを捕まえて生意気なことを言っていたんですが(笑)、そこで議論したりぶつかったりしたときに初めて、自分を磨きながらも組織をダイナミックに変えていくということを経験したんです。
変革というのは心の問題だから、働いている人たちの心を変えていくことで行動も変わっていって、結果も変わっていくわけですが、そのプロセスのいちばん手前にある「心」の部分がターン・アラウンドにとっては、最終的には一番重要なんですね。今が良いと思っている人もいるかもしれないし、われわれが提案していることが間違っていると思っている人もいるかもしれない。そういった社内の優秀な方々の気持ちの結晶で、会社が動いていくわけですから。
人の気持ちにまで突っ込んでベクトルを揃えていくということはすごく大変な作業です。でも、それこそが、やっぱりビジネスの醍醐味でもあるんじゃないかと思ったのがきっかけですね。それと同時にやっぱり経営というものにも強く興味を持ちました。