ビットコインが「良貨」になりうる3つの理由

『「ビットコイン」のからくり』前書き
吉本 佳生, 西田 宗千佳 プロフィール

 かつて大規模な投資詐欺でもちいられた「円天」に似た、いかがわしさを感じる人もいます。マウントゴツクスの破綻は、こうした疑念を強めたかもしれません。ビットコインのかなりの部分が犯罪者たちによって保有されている、といった報道が、危険性を強調したからです。

 おもしろいことに、経済・金融・社会・会計などの社会科学の専門家のなかには、自分たちには理解がむずかしい「情報(暗号)技術」に不安をもちながらも、経済社会システムのひとつとしては十分に成立すると考える人がたくさんいます。他方で、ビットコインの技術的なしくみをきちんと理解できる理数系の専門家は、技術面を高く評価しながらも、「通貨制度(経済・金融制度の根幹のひとつ)」としての肝心な部分で問題があるのではないかと、疑っていたりします。

 お互いに怪しんでいるのですが、両者の専門部分での意見をあわせると、暗号通貨は意外に優れているのではないかとも思えてきます。もちろん、頭から否定する人たちもいますし、疑念や不安がすべて払拭されたわけではありませんが、怪しい錬金術と決めつける前に、あるいは、新しいビジネスチャンスとみて飛びつく前に、きちんと専門的に検討すべき対象だというのが、本書の筆者たちの立場です。

 本書は、注目が集まってきたビットコインを題材に、数理暗号・情報技術と通貨制度の両面から、マジメに暗号通貨について考えます。まずは、暗号通貨のからくりをわかりやすく解説し、通貨(貨幣)とはなにかを基本から語り、これらをふまえて暗号通貨の未来を探ってみましょう。

 筆者たちは、ビットコインのような暗号通貨の未来は、利用者一人ひとりの考えと行動が積み重なって決まると考えています。ですから、本書で性急な結論を導くつもりはありません。後半では、いくつかの将来像も示していて、専門家の観点からは可能性が高そうにみえる内容ではありますが、結末は予想がむずかしいといえます。

 ビットコインの登場は、通貨に新しい選択肢をもたらしましたが、これが通貨として発展するかどうかは、一人ひとりの選択にゆだねられています。「私たちが選ぶ」のです。そのために、ビットコインや暗号通貨について、マジメに知りたい、考えたいという読者が、自分自身で判断するための基礎知識を提供することが、本書の目的です。

 なお、情報技術面の執筆は西田宗千住が、経済面の執筆は吉本佳生が担当しました。異なる専門分野の共著者による本書が、うまく一冊の本にまとまっているとしたら、それは講談社ブルーパックス出版部の倉田卓史副部長のご尽力の賜物です。ネガティブな評価も強く残るビットコインの出版企画を、リスクを覚惜のうえで引き受けていただいたこととあわせて、深く感謝いたします。

著者  吉本佳生(よしもと・よしお) 
一九六三年、三重県生まれ。エコノミスト・著述家。専門分野は生活経済、金融経済、国際金融。著書に『確率・統計でわかる「金融リスク」のからくり』(講談社ブルーバックス)、『金融工学の悪魔』(日本評論社)、『スタバではグランデを買え!』(ダイヤモンド社)など。NHK教育・総合テレビで放送された「出社が楽しい経済学」の出演・監修者。

著者  西田宗千佳(にしだ・むねちか) 
一九七一年、福井県生まれ。ネットワーク、IT、先端技術分野の第一人者として活躍するフリージャーナリスト。著書に『顧客を売り場に直送する――ビッグデータがお金に変わる仕組み』(講談社)など。月に2回、毎号書き下ろしの短編電子書籍を販売する個人メディア「西田宗千佳のRandom Analysis」で、新しいメディアの形を模索している。
『暗号が通貨になる
  「ビットコイン」のからくり』

「良貨」になりうる3つの理由

吉本佳生・西田宗千佳=著

発行年月日:2014/5/20
ページ数:272
シリーズ通巻番号:B1866

定価:本体 900円(税別)
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(前書きおよび著者情報は初版刊行時点のものです)