「青い惑星」はいかにしてできたのか『地球進化 46億年の物語』

すべては複雑に絡み合い「共進化」する
ロバート・ヘイゼン

 昔の鉱物学は、地球とその過去についてのすべての知識の中心であったにもかかわらず、不思議なほど進歩や発展がなく、時間による変転という概念から切り離されてきた。これまで二〇〇年以上にわたって、鉱物の化学組成、密度、硬度、光学的性質、結晶構造の測定が、鉱物学者の主な研究対象だった。どこかの自然史博物館を訪れてみれば、私が何を言っているのかわかるだろう。すばらしい結晶の標本がガラスケースの中にずらりと並べられ、ラベルにはその名前と化学式、結晶系、産地などが記されている。そこにある貴重な地球の断片には歴史的な情報がたっぷりと含まれているのだが、その鉱物が生まれた年代やその後の地質学的な変化を示すヒントをさがしても、徒労に終わる可能性が高い。昔の研究方法は、鉱物からその感動的な生活史をほとんど切り離していたのだ。

 その従来の見方も変わらざるをえなくなった。地球の豊富な岩石に刻まれた記録を調べるほど、生物と無生物のどちらも含めた自然界が、何度も形を変えているのがわかる。地球は時間の経過とともに変化するという理解が進んだことで、鉱物がどのように生まれたかだけでなく、いつ生まれたかまで推定できるようになった。そして最近、極端に温度の高い噴火口や酸性の水たまり、北極の氷、成層圏を漂う塵といった、生命を寄せ付けないと考えられていた場所で有機体が発見され、生物の起源と生き残りを理解するうえで、鉱物学が重要な分野とみなされるようになった。この分野で最も権威がある雑誌『アメリカン・ミネラロジスト』の二〇〇八年一一月号で、私と同僚は鉱物の世界とその信じられないような変化について、これまで考慮されていなかった「時間」という面からの新しい考え方を提起した。私たちが強調したのは、はるか昔には、この宇宙のどこにも鉱物が存在しなかったということだ。ビッグバン後の異様に温度の高い混乱した状況では結晶化合物が形成される可能性もなく、ましてそれが残るわけもなかった。最初の原子──水素、ヘリウム、少量のリチウム──が、混沌の中から現れるまで数十万年かかった。それらのガス状元素が重力の作用によって最初の星雲となり、その星雲が崩壊して最初の高温、高密度、白熱の星となるまでに、さらに何百万年もが過ぎた。これら最初の星々が大きくなって超新星爆発を起こし、周囲をおおう元素が豊富に存在するガスが冷えて凝縮し、小さなダイヤモンドの結晶となったときに、宇宙の鉱物学の長い物語が始まったのかもしれない。

 それで私は取りつかれたように、岩石の証言に耳を傾けるようになった。それは断片的だったりあいまいだったりすることもあるが、思わず引き込まれる興味深い話で、誕生と死、停滞と流動、起源と進化について語っているはずなのだ。これまで語られなかった壮大で複雑に絡み合った生命と非生命の領域―生命と岩の共進化―には驚きがあふれている。私たちはそれらを分かち合わなくてはならない。それは私たちが地球だからだ。住まいと生きる糧を与えてくれるすべてのもの、私たちが所有する物質すべて、私たちの肉体をつくる原子と分子、それらすべてが地球から生まれ、地球に戻る。私たちの故郷を知ることは、私たちの一部を知ることなのだ。

 地球の物語を分かち合わなければならないもう一つの理由は、近年海洋や大気がその長い歴史に類を見ないスピードで変化しているからだ。海面が上昇する一方、水温も上昇し酸性化も進んでいる。世界的に降雨パターンが変化し、気候も荒れやすくなっている。極の氷やツンドラの凍った土が融け、動植物の生息地も変わっている。本書でこれから掘り下げていくが、地球の物語は長い変化の物語でもある。しかし過去にこれほど危険なスピードで変化が起こったとき、生命体はひどい犠牲を払ったように思える。思慮深く、自分たちのために時機をのがさず行動するためには、地球とその物語をよく知らなければならない。三八万キロメートル離れた生命のない世界から撮影されたすばらしい写真を見れば深く納得できるとおり、私たちが住める場所は他にはない。