血圧・血糖値・コレステロールこれが正常と異常の分岐点です【第1部】患者は二の次で大ゲンカ 医療費を減らしたい役人が悪いのか、薬を売りたい製薬メーカーが悪いのか

国がゴマかすなら教えましょう"
週刊現代 プロフィール

病人の数を増やせ!

医療のプロの間でも意見が割れているのでは、我々一般人は判断のしようがない。結局こうした混乱で、割を食うのは、一般の患者である。前出の山沢さんは、現在、降圧剤の他にコレステロールや血糖値の薬など計6種類を処方されているという。

「これはムダだったのか。私は健康体なのに、無理矢理、薬を飲まされていたのか。まったく意味が分かりません。かと言って、病気じゃない保証もないから、今さら薬をやめるのも怖い。いったい何を信じればいいのか。お医者さんたちは患者の身体や生命をどう思っているんですかね」

このような患者不在の「血圧論争」が起きてしまう背景には、医学界が抱える大きな構造的問題がある。

まずは、「国民の健康を守る」という建て前で厳しい基準を設け、それによって「患者」の数をどんどん増やし、莫大な利益を上げている勢力の存在だ。

前出の山沢さんは、昨年、降圧剤の銘柄を新しいものに変えたばかりだという。処方されていたノバルティスファーマ社の薬「ディオバン」が、臨床試験においてデータの捏造があったとして問題になったからだ。

製薬業界が大学の研究機関などと結託して、自社の製品を売りさばくのに都合のいいデータを作り出すというような不正は日常的に行われている。国立大学病院で循環器系の研究を行っている医師が語る。

「データの集め方や基準の作り方は、正直どうにでもなる。サンプリングのやり方や試験期間を変えるだけで、病人の数を増やすことも減らすこともできるんです。

だから、製薬会社と研究者、医者の思惑が一致すれば、『新しい病気』を作り出し、『お客』である患者を好きなだけ作ることも難しいことではありません。

医者といえども開業医のほとんどは、最新の医学的知識など持ち合わせていません。だから製薬会社のMR(自社の薬の情報を医者に伝える役割を負う人)が言うことを鵜呑みにしてしまうんです。病院を回るMRは若くてきれいな女性も多い。ちょっとした色仕掛けですよ」

大手製薬会社でMRを担当している幹部社員は語る。

「今回の血圧の新基準は、はっきり言って製薬会社にとっては大迷惑なんです。市場規模が1兆円近くある降圧剤は稼ぎ頭ですからね」

製薬業界が宣伝を行う相手は、医者だけではない。テレビや新聞、電車や駅の中といったいたるところで、人は健康に関する情報を無意識のうちに擦り込まれている。日常的に「血圧は低くないといけない」「コレステロールは下げなければならない」と健康不安を煽られれば、「血圧が下がる」「血がサラサラになる」という食品や薬品に飛びつくようになる。まさに業界の思うツボだ。