【第4回】はこちらをご覧ください。
広告会社の仕事は、基本的には広告の対象となる商品が明確に決まっています。ところが、コンサルティング部門には、「そもそもどんな商品を作ったらいいのか分からない」「企業の今後の方向性が見えない」そんな相談が日々寄せられます。いわば、広告以外の悩みよろず相談所です。
そんな部門に異動することになり、私は従来の仕事のスタイルを変えざるをえませんでした。一番の大きな要因は、対応する相手が大きく変わったことです。
それまでの仕事は、相手はメーカーの宣伝部や広報部でした。ところが、コンサルティング局の仕事のほとんどでは、経営者や経営企画部門、事業部門の責任者が相手になりました。
日ごろから広告会社とお付き合いの多い宣伝部や広報部であれば、わざわざ自分が何者かを明らかにしなくても、「きっとこの人は広告や広報のプロに違いない」と思ってもらえることも多いのですが、経営者となると話は違います。
経営者は、博報堂の社員である私を、「広告屋さんだから、広告や広報についてはある程度知っているかもしれないが、わが社の事業についてはきっと何も知らないだろう」と思っているはずです。
さらに、「博報堂のコンサルタントです」と名乗ったところで、「広告会社にコンサルティングをする部門なんてあるの?」と、怪しさは募る一方です。近年、様々な〝コンサルタント〟という肩書の人が登場していますが、素晴らしいコンサルタントもいる一方で、「高い金払ってコンサルにだまされた!」「俺はコンサルは信用しないんだ」と公言してはばからない経営者の方もたくさんいらっしゃいます。
そのうえ、現在33歳の私は、広告や広報の仕事であれば「若者の気持ちが分かりそうだ」と有利に働くこともありますが、経営者の方の目には、単なる経験の浅い若僧にしか映りません。
「事業について素人であり、怪しいコンサルタントであり、単なる若僧」という、何一ついいところのない逆風からのスタート。せっかくお会いするチャンスを頂いた経営者の方に対して、どうすれば自分に興味を持っていただけるか。それが、異動した私が直面した最初の課題でした。
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⇒本を購入する AMAZONはこちら / 楽天ブックスはこちらにわか勉強でコンサルタントの雰囲気を装い、本で読んだだけの経営理論を語ってもダメそうなことだけは、直感的に分かりました。とはいえ、「御社はこんな事業を行うべきです」とか、「こんな商品を作るべきです」と、入社以来の広告会社的スタイルでたくさんアイデアを考えてプレゼンテーションしたところで、あまり聞く耳を持ってもらえそうにもありません。
そこで、私は仕事のスタイルを百八十度変えることにしました。一言で言うと、「アイデア勝負」から「発想勝負」に切り替えたのです。