2014.05.16

「生命誕生」科学史上最大の謎が今解き明かされようとしている!

なぜ生まれたのか?なぜ進化したのか?
中沢 弘基 プロフィール

──生命の起源を探る研究としては、高校の教科書でも取り上げられている、無機物から生命を構成する有機物がを人工的に合成する「ミラーの実験」が有名です。近年、原始地球は、ミラーたちが想定した環境とはかなり違っていたといわれていますね。

中沢:それについては本書の第4章で詳しく説明しています。生命発生の素になった有機分子、例えばタンパク質の素のアミノ酸やDNAの素の核酸塩基などですが、それらがどうやって地球上に多量に生成されたか、を実験で示したのが「ミラーの放電実験」だったのですが、彼は当時の、1950年代初め頃の地球科学の知識で、原始大気が水素、メタン、アンモニア、水でできていたと想定していました。

しかし、20世紀末に急速に発展した地球惑星科学によって、原始大気は彼の想定した組成とはまったく違って、水や窒素や一酸化炭素であることが明らかになったのです。したがって、彼の実験および1980年代まで続いた類似の実験はすべて、その前提が覆ってしまいました。

中沢氏は、生命の構成要素となる有機物は、40~38億年前の地球に大量に飛来した隕石衝突によって生成されたとする「有機分子ビッグ・バン説」を唱えている

──中沢先生はミラーの仮説に替わる「有機分子ビッグ・バン説」を唱えられていますね。

中沢:「有機分子ビッグ・バン説」は、ミラーの説に替わる説で、大気が水や窒素や一酸化炭素であっても、生命の素になる有機分子が生成できることを示したものです。この説が妥当であることは模擬実験で実証されています。ただし、「有機分子ビッグ・バン説」は、生命の素になる有機分子の生成メカニズムを示すもので、それがわかったからと言って、すなわち「生命起源の謎」が解けるものではありません。

有機分子の起源がすなわち生命起源だと考える方が多いのですが、そのように単純なものではありません。有機分子の起源がわかっても、それらが結合し組織化してバクテリア程度の機能を果たすまで進化する経緯のすべてがわからなければ、生命起源の謎は解けません。そのそれぞれの段階のメカニズムが充分に分かったわけではありません。

本書では、有機分子が生成された後の進化の過程を、「有機分子の自然選択」の視点から論じており、それを読めば、「生命起源」をめぐる最新研究がどの段階まで進んでいるかがご理解いただけるはずです。

──生命の起源を探る研究は、化石を探す考古学的なアプローチとDNAの変異に着目する分子生物学的なアプローチがありますが、本書を読むと、いずれも行き詰まっていることがわかります。中沢先生の「分子進化の自然選択説」と「隕石衝突よる有機分子のビッグバン」という仮説は、この閉塞状況を打ち破るものです。読者にもわかるように、この仮説についてわかりやすく解説していただけますか?

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