トヨタ自動車が8日に発表した2014年3月期決算は、売上高が前期比16.4%増の25兆6919億円、営業利益が73.5%増の2兆2921億円、当期純利益が89.5%増の1兆8231億円。営業利益、当期純利益ともに6年ぶりに過去最高を更新した。
本業での儲け具合を示す営業損益段階では、円安による為替の影響がプラス9000億円、原価改善の努力で2900億円、営業面の努力でプラス1800億円の増益効果があり、諸経費の増加による4800億円の減益要因などと相殺され、トータルでプラス9712億円の増益(率換算で73.5%増)となった。いかに円安が増益に貢献しているかが分かる。
トヨタはリーマンショック後の09年3月期に純損失を計上、赤字に転落した。その本質的な要因は、世界的な金融危機の影響を受けてグローバル販売が落ち込んだことではなく、驕りと油断から、危機感乏しく、無防備に事業を拡大させ、過剰設備に苦しんできたからである。
さらに言えば、利益率の高い大型高級車に依存する体質が根付き、トヨタが本来強かった大衆車で稼げなくなったからでもあった。
豊田章男社長はこうした体質を変革していくために、「もっといいクルマを造ろうよ!」「良品廉価」などのスローガンを掲げて、良い商品を造ることを軸にした改革を進め、目先の利益だけは追わない経営方針を掲げてきた。
こうした点について、筆者は何度か本コラムで厳しい論評も織り交ぜながら紹介してきたが、最近は、概ね豊田社長が取り組む構造改革については一定の前向きの評価をしてきたつもりだ。
しかし、今回の決算発表を取材して、トヨタはまだまだ自助努力が足りないと感じた。トヨタの持つ本来の実力からすれば、まだ力は半分も出せていないのではないか。
筆者がトヨタはまだ自助努力不足と感じるのは、他社比較で「営業面の努力」の額が低いからである。自動車メーカーが言うところの「営業面の努力」とは、主に1台当たりの収益性が高い車をいかに値引きせずに売って利益を出しているかを指す。「台数構成」「モデルミックス」などと表現されることもある。
この数字には、お客がファンになって値引きなしでも買ってくれるブランド作りや、設計・デザイン改革などメーカーとしての地道取り組みの成果が含まれるため、企業としての本当の強さが現れる面がある。それに対して、為替による利益は外的環境の変化の恩恵を受けているもので、自助努力による成果ではない。