日米共同声明に「尖閣諸島」が明示的に言及された理由

PHOTO by gettyimages

去る4月25日、日米間における長時間にわたる綱引きの結果、「日米共同声明」が発出された。これで一番胸を撫で下ろしたのは安倍晋三総理大臣だったはずだ。

なぜならば第二次世界大戦で「敗北」を喫して以来、我が国の総理大臣は当初は直接的に、そして主権回復後においても事実上、米国による圧倒的な影響の下、選ばれてきた経緯があるからだ。そして時の総理大臣は全員、「アメリカ型に転換された戦後民主主義」の美名の陰で維持されてきたこうしたシステムを受け入れてきた。

私はこの関連で長年、日米外交に携わってきた外務省OBが語った言葉が忘れられない。

日米共同声明は書かれていることに意味がある

「総理にとって最も重要なのは、米国の信任を得ることだ。誰もそうとは表向き語らないが、米国が関心を失ったという素振りを見せるや否や、その総理大臣は権力の座から転げ落ちる。だから総理は米大統領の接遇に必死になる。それを支えるからこそ、外務省も永田町・霞が関で体面を保つことができるのだ」

今回のオバマ来日にあたっても日本側が同じマインドで望んだことは間違いない。しかし肝心の米国側の意向が異なっていたことは、「国賓としての招き」をオバマ大統領自身が一度は断っていたことからも明白であった。

さらに輪をかけてこのことを明らかにしたのが環太平洋経済連携協定(TPP)を巡る不協和音だ。普通ならば何らかの形で「大団円」へと持ち込まれるはずの交渉は結果としてまとまらず、事務方による交渉がその後も延々と続けられるに至っている。

「何かが米側で大きく変化した」

我が国の外交当局、そして総理官邸がそんな印象を抱かなかったわけがない。彼らは鈍感ではない。むしろその逆で米国の動きとなれば実に繊細なセンスだからだ。だが、それでも日本側が動くわけにはいかない。「米国から再び新しい枠組みが与えられるまでは動かない。下手に動くとフライングになり、米国からとんでもないしっぺ返しを受けるかもしれない」と危惧しているからだ。

確かにこれまでのルールに則ればそのとおりだと私も思う。米国は東京に限らず、我が国の至るところにインテリジェンス機関の要員を配置している。そうしたがんじがらめの中で、下手な動きを示すとすぐさま見つかってしまうのである。「だから、おかしいと思っても黙っておく」---これが我が国社会における「隠されたルール」だった。

「しかしね、原田さん。そういう考えが全くもって時代遅れなのだよ。日米共同声明は、出されたことに意味があるんじゃない。実はそこに書かれているある条項には米側の万感の想いが込められている。ところがそのことに日本側が全く気付こうともしないので、本当のところ米側はとんでもなく苛立っているんだよ」

オバマ来日で行われた日米首脳会談の直後、私はある重要な人物からそんな謎解きを受けた。皆目検討がつかなかった私は率直に何が米側の関心事項なのかを尋ねてみた。するとこの人物からはこんな答えが返ってきたのだ。

この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら