Gbiz電書編集部(以下Gbiz): 皆さん、こんにちは。古賀茂明と日本再生を考えるメールマガジン動画版第16回でございます。オバマ大統領来日の日に収録しています。古賀さん、どうぞよろしくお願いいたします。
古賀茂明(以下古賀): はい、よろしくお願いします。
まず原発の再稼働の動きですけれども、皆さん、よくご承知のとおり、九州電力の川内(せんだい)原発というのがあります、鹿児島県ですね。この川内原発がおそらく再稼働第一号になるだろうと、こういう流れになってきています。
ほかにも日本全体で17基ぐらいの原発再稼働から、審査申請がされていて、並行審議されていたんです。ここへ来てですね、とにかく夏に再稼働させないと、あまり意味がないのだから、早く進められるものを先に進めて、一つでも夏の再稼働につなげようと、こういうことになったようです。その第一号候補として川内原発が選ばれたと。川内にまず集中してですね、審議をして、再稼働につなげるということであります。
早ければ6月にも、規制基準に適合していますという「お墨付き」を原子力規制委員会が出す。それですぐ再稼働に行くかというと、そうではなくて、そのあと、もちろん地元の同意というのを取らなくてはいけません。一応、川内原発の周りの自治体はみんな、再稼働をやってくれと言っているんですけれど。
もちろん、その前に基準には適合していてもですね、本当に、それぞれの機器がそのとおりになっているかというのを、現地で検査したり、書類の審査をしたりという手順を踏むので、地元自治体の同意手続きも含めれば、いろいろやっていくとですね、どうしても7月いっぱいぐらい掛かってしまうのではないかと。そうすると早くても7月の終わり、ないしは8月からしか、再稼働できないのではないかというふうに言われています。
九州電力は、もともと関西電力の次ぐらいに、全体の発電に占める原発の比率が非常に高いんですね。原発の代わりに、今、一所懸命、火力を動かしているわけですが、その燃料費がかさむ。それによって経営が苦しくなるということが起きてます。
それで、とにかく早く動かしたいということだったんですが、実はなんでこの九州電力がですね、一番になったのかというとですね、ここには一つのカラクリがありますね。九州電力はですね、電力会社間の談合破りをやって、そして一人だけいい子になって、規制委員会に優先的な取り扱いを認めてもらったと、こういう事情があります。・・・(以下略)
古賀: ところがですね、先ほど言ったとおり、九州電力というのは、原発に頼っていた比率が高くてですね。もともと自己資本比率も低いほうだったので、赤字が何年も続き原発が再稼働できないと、へたをすれば債務超過になってしまうかもしれない。もう破綻するかもしれないというようなところに、だんだん追い詰められてきました。
そこで九州電力は、みんなで談合していたんですけれども、一人だけ談合破りをしました。規制委員会に対して、いや、わかりましたと。もうあなたのおっしゃるとおりです。私たちは基準地震動というのを見直してですね、もうちょっと大きいのが来るということに想定を変えますということを、初めて認めたんですね。
もちろんそれを認めるとですね、認めただけじゃダメで、より大きな揺れに対応するための対策を、たくさんやらなければいけません。建物の強度を増したり、関連する設備の強度を上げていくというようなことをやらなくちゃいけないので、非常にお金がかかるんですが、それはかかってもしょうがない、とにかく早くこの夏、再稼働させたいということで、談合破りをしてしまったのです。
規制委員会から見るとですね、ほかの電力会社はみんな抵抗している。特に関西電力は、今、事実上、国有化されちゃった東京電力なきあとの、民間電力会社としては関西電力が一番最強なんですね。で、経産省との絆も非常に強い、影響力の大きな会社なんですけれども、この関西電力というのは、一番原発の割合が高いので、この関西電力からしてみるとですね、その基準地震動を見直して、多くの原発に対して追加投資するということは、絶対避けたいというふうなことで、関西電力が中心になって談合してですね、それを守ってきたのに、抜け駆け的に九電にやられてしまったと。
で、規制委員会から九電はかわいい。だけど、関電というのはとんでもないという、今、感じになっていまして、関西電力は非常に苦境に立たされているというような事情があったようです。
そうするとですね、川内原発でさえ、この夏ギリギリという話ですので、関西電力はですね、大飯原発とか、高浜原発とかですね、再稼働したい原発があるんですけれども、これはもうこの夏は間に合わないと、こういう状況になってきてしまいました。
そうなるとですね、電力がまた足りないっていう、この大キャンペーンが、今、始まってましてですね。これは2012年にですね、関西電力のもう大停電騒ぎみたいなのがあってですね。結局、もちろん停電にはならずに、大飯原発を再稼働するということを、民主党政権に踏み切らせるということになったわけですね。
あのときに当時府知事だった橋下徹さんがですね、再稼働反対と言っていたのに、最後、容認に回って、裏切ったと言われて、非常に市民・国民から非難を浴びた、あの事件ですけれども、そのときの状況に近くなってきているんですね。
ただ、もうどんなにがんばっても大飯とか、高浜の再稼働を、夏までに間に合わせるということはできなくなっています。そこで今のところですね、もうやむを得ずということで、東日本のほうから西日本のほうに、電力を融通するということが計画されています。
それによって、なんとかギリギリの予備率は確保できると。だいたい3%は余裕を持ってなくちゃいけないと言われているんですけれども、それをなんとかギリギリ確保できるというようなことになっています。
古賀: ただですね、ちょっと不思議なのは、東日本では余るという状況になっているんですね。東日本ももちろん全然、原発は動いてないわけです。
東電はですね、やっぱり東日本大震災の直後、福島も止まった。原発全部、止まった。それから火力も一部、壊れてですね、止まったりして、一時、停電騒ぎがありましたね。計画停電とかやりましたけれども、そのときにですね、実はものすごく努力をしたわけです。
たとえば節電をいろいろ呼び掛けるっていうことがあってですね。これは東京電力管内ではものすごく、みんなが協力してですね、10%以上の節電が進んじゃったんですね。
そのうえ実は東京電力は、小さい火力発電機をですね、あのとき100基とか、200基とか、いろんなとこから駆り集めてきて、動かして、確か200万キロワット分ぐらい、電気をつくったんだと思うんですけど。それぐらい努力をしたわけですね。
その後、火力発電所が復旧したり。それから節電はさらに進んだりしてですね、東電はもう今、余裕があるという状況になっちゃったんですね。
関西電力はですね、別に東電みたいに、あんなダメージを受けてないんですけれども、2011年以降ですね、はっきり言って、まったく努力をしてなかった。ですから、3年、経っても、原発が動かないと大変だって大騒ぎしているという状況ですね。
関西電力がどれくらい、いろんなとこから駆り集めて、新しい発電能力を備えたかっていうのは、ほとんど聞いたことがないです。それから省エネを進めてくださいっていう要請もはっきり言って、ほとんど真剣にはやってないです。去年の夏もですね、省エネ目標という、数値目標を出しませんでしたね。今年もですね、まだなんかそういう数値目標というのを出してないんですね。
これは非常に不思議だなと思うんですけれども、夏に備えてということであれば、もう今でも遅いぐらいで、ほんとはもっと早くからですね、みんなにもっと節電してください、いろんな対応策を考えてくださいっていうのを呼び掛けなきゃいけないんです。けれど、そういうことをまったくやらずに、わざと放置して、大変だという状況をつくっておいて、脅しを掛けて、原子力規制委員会に圧力を掛けていくという作戦だったと思うんですが、完全に失敗したということだと思います。
ただ、気をつけなくてはいけないのは、これからですね。 足りないので、値上げをするぞということで、もう1回、値上げをしてるんですけど、再値上げということを言い出しています。で、動かさないんだったら、値上げするからなという脅しを、今、やってきてますので、ここもですね、よく見ていかなきゃいけないなというふうに思います。
公取が摘発したんですけど、関電の電気工事でですね、談合をやってたと。それは関電が談合じゃなくて、関電は発注元で、普通で言えば被害者なんですけれども、それを請け負っていた電気工事会社が、みんなで談合して、非常に高い契約価格で、ぼろ儲けしていたということなんですが、それは全部、電気料金に乗っています。
しかもですね、実は関西電力がいいかげんなことをやっているから、そういうことが起きるんですね。東京電力でも同じことが起きていたんですけれども、そういうところをこれから経産省がどれぐらいチェックできるのかを見なくてはいけないんです。残念ながら経産省にそういうことが期待できないというか、完全に癒着しています。特に関西電力は、今もう経産省とベッタリなんです。そういうところはちょっと期待できないなと思います。
これから電力の自由化を進めるために、今、電気事業法を審議してますけれども、この審議の中、この法案の中にそもそもですね、そういう問題意識というのはまったくないんですよ。どうやって電力の料金について、きっちりした査定をさせるかと。で、経産省と電力会社が癒着した中での料金査定というのを、どうやって防ぐのかっていうのが、まったくないんですね。
私はもうずっと前から言ってるんですけれども、この権限はですね、経産省から切り離して、原子力規制委員会と同じような独立の委員会でですね、もう現場に入って、例えば入札の中身も全部チェックする。いろんな調達の原価を全部一つひとつチェックして、どんどんカットしていくという、そういうようなことができるような組織に、権限を移すべきだと考えますけれども、残念ながら、ちょっと、今のところ、そういう改革の方向性は見えてないということだと思います。・・・・・・