全国民必読 気をつけろ! 鳥インフルエンザは熊本だけでは終わらない

週刊現代 プロフィール

そして防疫措置完了から21日が経過しても周囲で感染鶏が発見されなければ、半径3㎞圏内に設定された「移動制限」も解除される。

「うちみたいな、鶏が300羽くらいしかいない小さな業者は近所のスーパーや卵の自動販売機に卸すからいいですが、1万も2万も飼っているところは、熊本市とか八代市とか出荷先が制限区域外になる」(A氏)

毎日、生み落とされる卵は出荷できない。その一方で、日々のエサ代が経営を圧迫する。A氏はこう力を込めた。

「われわれが一番恐れているのが第二、第三のX農場が出ること。そうなると搬出制限の期間も範囲も広がってしまう。もうどれだけ損害が出るか、想像もつきません……」

鳥インフルエンザは法定伝染病なので、検査や殺処分などにかかった費用は国から出る。殺処分された鶏についても、出荷額に応じた損害補償金が支払われる。

「でもそれは当事者だけ。X農場だけに支払われます。われわれ、周辺の農場には、何の補償もない」(A氏)

だが、「当事者」が手厚く保護されるかというと、そうではない。

隣県・宮崎の養鶏業者、佐藤義明氏が述懐する。

「前回の騒動のときは、何万羽も殺処分した同業者は取引がゼロになってしまい、回復するのに相当な時間を要しました。その間の生活補償はありません。養鶏場にとって、鳥インフルに感染するかどうかは死活問題なのです。熊本はすぐ隣の県。県境を越えて宮崎に入ってこないか、不安な気持ちでいっぱいです」

周辺の住民によれば、X農場が営業を始めたのはいまから30年ほど前。60過ぎの夫婦が経営しており、出荷先は宮崎だという。

「X農場の御主人は人吉市のほうに住んどるけん、多良木には通ってこらす。だけん、どんな人かはわからんとよ」

X農場の夫婦はいま、どんな状況にあるのか。取材をすすめると、なんと主人は農場の事務所に隔離され、家族との接触を禁じられていた。本人にかわって妻が取材に答えた。

「主人は『鳥インフルエンザに罹っている可能性がある。タミフルを飲んで10日間は外部との接触を避けなさい』と保健所から指示されています。現場で死んだ鶏を扱っていましたから、感染している疑いがある。ウイルスをばら撒いてしまう可能性があるので、事務所にこもり、人との接触を避けろ、というのです」