[虎四ミーティング~限界への挑戦記~]
高原直泰(SC相模原)<前編>「突然の病を乗り越えたストライカー」

スポーツコミュニケーションズ

事実上の“引退宣告”

二宮: プロ入り後は、99年ワールドユース準優勝、00年シドニー五輪ベスト8など、国際舞台で結果を残し、01年にはアルゼンチンの名門ボカ・ジュニアーズに移籍。02年に磐田に復帰して、同年の日韓W杯出場も期待されましたが、肺血栓塞栓症でメンバー入りを逃しました。
高原: いろいろな苦境に直面してきましたが、改めて振り返ると、あの時が一番しんどかったですね……。

二宮: 原因はなんだったのでしょう。
高原: ポーランドでの代表戦後、フランス経由で日本に帰国したんです。フランスまでの機内が狭くて、足元に荷物を置くしかない状態でした。また試合後の水分補給も不十分だったらしく、フランスまでの約3時間を少し脱水状態かつ苦しい体勢で過ごしたんです。

二宮: それらの状況がいわゆる“エコノミークラス症候群”を引き起こしてしまったわけですね。高原さんが発症したことで、日本でも広く知られるようになりました。
高原: そうですね。僕の場合は股関節の血管に血栓ができて、立ち上がった瞬間に、それが肺に飛んだ。でも、その時は自覚症状がなかった。フランスの空港に着いた後に、「呼吸するたびに、左胸が何か痛いな」というくらい。ですから、日本に帰国した後も、リーグ戦に2試合出場したんです。その後、夜中に激しく痛みを感じて、トレーナーに電話しました。病院に行って、そのまま緊急入院。検査の結果が肺血栓でした。そして、発症したら、“ワーファリン”という血液が固まることを防ぐ薬を一生摂り続けないといけないと言われたんです。

二宮: ワーファリンの副作用として、出血した時に血が止まりにくくなることがある。生傷が絶えないスポーツ選手にとっては、文字通り引退に直結する死活問題です。
高原: そうなると、サッカー選手としての生活はもうできない。それ以上に、大好きなサッカーができなくなる可能性もある……。まだ22歳でしたし、詳しい説明を受けた時は、ショックを受けましたね。

二宮: 事実上の“引退宣告”ですから、辛かったでしょうね。
高原: 担当医師は基本的には復帰にOKは出してくれませんでした。というより、復帰した事例がないので、許可できなかったんだと思います。それだけ、この病気に対する情報がなかった。そこで、僕の叔父が循環器系の医師だったので、セカンドオピニオンを求めたんです。すると、「再発のリスクもあるけど、本人の納得するのなら、最低3カ月服用すれば大丈夫だろう」と言ってくれた。それを受けて、3か月後に試合に出場できるように準備していきました。

二宮: 血栓が心臓や脳などに飛んでいた場合は、命に危険が及ぶ場合もあります。発症から約4カ月後の7月13日、浦和レッズ戦で復帰した時の心境は?
高原: 「ああ、戻ってこられたな」と。その一言でしたね。

二宮: うれしかったでしょうねぇ。
高原: サッカー人生の中で一番うれしかったかもしれません。一度は諦めかけたサッカーでしたから……。

二宮: 復帰後は磐田の完全優勝(当時は2ステージ制)に貢献し、個人でも得点王(26点)&リーグMVPに輝くなど、それまでの鬱憤を晴らす活躍でした。
高原: 本当に、そうですね。周りとの連係も出来上がっていたので、何をやってもうまくいくという感覚でした。

二宮: 04年にも肺血栓塞栓症が再発しました。
高原: 再発した時は、すぐ病院に行きました。1度経験していたことが大きかったと思います。それでも、オーバーエイジとして参加する予定だったアテネ五輪に出場できなかったので、ショックではありましたけどね。今も再発のリスクは拭えないので、国内でも常に飛行機に乗る時は、ヘパリンという抗凝固薬を皮下脂肪に注射するようにしています。バスなどでも、試合後に少し長い時間移動する場合は、水分補給をしっかりとして、圧迫効果のあるソックスをはいたりしていますね。まあ、おかげで、健康には気を使うようになりました。それが今でも体力的に不安を感じずプレーできていることにつながっているのかもしれません。

<高原直泰(たかはら・なおひろ)>
1979年6月4日、静岡県生まれ。98年、清水東高から磐田へ入団。ルーキーイヤーから出場機会を得た。アルゼンチンから帰国した02年には、26ゴールの活躍で磐田の完全優勝に貢献。自身も得点王とMVPを受賞した。翌シーズンからブンデスリーガのハンブルガーSVに移籍。06-07シーズンにフランクフルトに加入すると、同シーズンで11ゴールをマーク。08年から日本に帰国し、浦和、水原、清水、東京Ⅴでプレー。今年3月、相模原に期限付き移籍した。代表では99年にワールドユース準優勝、00年シドニー五輪ベスト8。A代表では00年アジア杯優勝を経験。06年ドイツW杯にも出場した。J1通算214試合78得点、J2通算41試合11得点。海外ではアルゼンチン通算6試合1得点、ブンデスリーガ1部通算135試合25得点、Kリーグ通算12試合4得点。国際Aマッチ通算57試合23得点。身長181センチ、背番号31。

☆対談ダイジェスト動画☆ 

☆本日の対談で飲んだ商品☆
『フェアトレード』缶製品

 高品質なゼンショーフェアトレードのコーヒーと紅茶が味の特徴を活かした缶コーヒーと缶ミルクティーになりました。
 各地の生産者が栽培環境にこだわり、丁寧に育てた高品質なルワンダ、エクアドルのコーヒーとスリランカの紅茶葉を手軽に飲みやすい缶商品に仕上げました。
「すき家」の一部店舗で順次販売を開始します。

(対談写真:濱村達也、構成:鈴木友多)

協力:ゼンショー

編集部からのお知らせ!