ISHINOMAKI2.0代表理事 松村豪太さん【前半】「若者が大活躍する新しい石巻づくりへの挑戦」

『東北発10人の新リーダー~復興にかける志』より抜粋
田久保 善彦

高校に到着すると、避難所としてのルールが全くない中で、皆が混乱していた。そしてそこにはリーダーシップを取れる人は誰もいなかった。その状況を見た松村の叔父は、スポーツ指導者としての特性を生かして、積極的に皆に声掛けをしながらさまざまなことを決めようと努力していた。高校敷地内だけで3カ所、住民が避難している場所があり、松村たちは武道館に入ったが、1畳あたりに2〜3人がいるという通常ではあり得ない密集感だった 。

その後1週間ほど、夜は避難所、昼は事務所の復旧のための泥かきを行うといった日々が続いた。自宅には震災から2日後の3月13日に、道で出会う人と道路情報の交換をしながらたどり着いた。寒い中を腰まで水につかり、半分泳ぎながら通常なら30分程度のところが、その時は2時間以上かかったという。自宅に入ると、既に水は引いていたが、棚、箪笥、引き出し、ありとあらゆるものが倒れ、ガラスや収納されていたものが散乱していた。電化製品は、床に落ちた際に水に浸かったらしく、すべて使えなくなっていた。1階の一部が水に浸かっていたが、2階にあった着る物などは、ある程度持ち出すことができた。事務所の泥かきが終わると、その後は近所の泥かきを手伝ったりしていた。そして地震から10日目の3月21日にはインターネット機能が回復した。当時を振り返り、松村はこう語る。

「地震が起こり、ただ事ではないと感じたので、その時にたまたま手元にあったデジタルカメラで、その後のさまざまな様子を画像で適宜記録していたんです。それでインターネットの機能が回復した時、まず撮りためていた写真をスポーツクラブの活動ブログに時系列に沿って投稿しました。そこでたくさんの反響をいただき、外とちゃんとつながっているんだと感じることができて、とても励まされました。それまでは本当にまちが水に囲まれて孤立していて、新聞を見ることができたのも、震災後1週間目ぐらいだったんです。新聞を見た時は、ああ、3月12日も発行されていたんだって思いました。

そのうち、ブログから、自分に石巻のことを聞いてくる人が増えたんです。コメントを返したりと交流しているうちに、『手伝いたいんですけど』と言ってくれる方、そして実際に来てくれる方々が現れました。そういう方々をボランティア先というか、泥かき先に案内を始めたのが、スポーツ以外での活動での始まりでした」そしてこの活動が、後に松村が代表理事として立ち上げる石巻2.0の活動につながっていく。

【後半に続く】

田久保善彦(たくぼ・よしひこ)
グロービス経営大学院経営研究科研究科長。慶應義塾大学理工学部卒業、同大学院理工学研究科修了。スイスIMD PEDコース修了。株式会社三菱総合研究所を経て現職。グロービス経営大学院及び企業研修におけるリーダーシップ開発系・思考科目の教鞭を執る。著書に『ビジネス数字力を鍛える』、『社内を動かす力』(以上ダイヤモンド社)、共著に『志を育てる』(東洋経済新報社)、『MBA クリティカル・シンキング コミュニケーション編』、『日本の営業2010』、『全予測 環境&ビジネス』(以上ダイヤモンド社)、『21世紀日本のデザイン』(日本経済新聞社)等がある。
 

『東北発10人の新リーダー~復興にかける志』
田久保善彦著
(河北新報出版センター,1000円+税)

 

10人の若きリーダーたちの活動を通して、東北の可能性を探る。読んでいるうちに元気になる一冊。
 

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