果たして、ボタンの掛け違いだけだったのか――。
安倍官邸と外務省は、24日午前東京・元赤坂の迎賓館で行われた日米首脳会談で、よもやバラク・オバマ大統領が安倍晋三首相に対し共同記者会見での共同声明発表見送りを提案するなど全く想定していなかった。
25日付朝刊の新聞各紙を見ても、『毎日新聞』が一面トップに「共同声明異例の見送り―米大統領『TPPぎりぎりまで』」、『読売新聞』は「日米TPP未明も調整、首脳会談後断続的に―共同声明 異例の持ち越し」との大見出しを掲げ、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)交渉については、首脳会談で大筋合意できず、日米共同声明の発表が見送られたと報じた。
筆者は、安倍首相が4月初旬から強くこだわってきた首脳会談前夜の非公式夕食会が東京・銀座の高級すし店「すきやばし次郎」で実現した23日の昼、官邸幹部と長時間話をする機会を得た。
同幹部は、その日までに甘利明経済財政・TPP担当相とマイケル・フロマン米通商代表部(USTR)代表が東京とワシントンで熾烈な協議を行ってきたが、容易に「日米大筋合意」に至らない内情を披瀝してくれた。だが、同幹部と筆者は、最後は安倍首相とオバマ大統領の政治判断で交渉は妥結するとの見方で一致した。
それでも、同幹部が別れ際に「大筋合意まで行かなくても、合意に向けて協議を継続・加速化するという文言は(共同声明に)入るでしょう」と言ったことが気になっていた。
今にして思えば、当方に知られたくないほど甘利・フロマン閣僚協議と、その前後に続けられてきた実務者交渉が難航しており、その内実を承知していたのかもしれない。